関内新聞

沈みかけている歴史、中村川の不法係留船

生活感を満載したままの船が、いまにも沈没しそうな状態に

JR石川町駅ホームの下を流れる中村川。その川面に、開発が進んでゆく周囲の景色から取り残されたような船が浮かんでいます。

大きさは幅7~8m、長さ25~30mほどでしょうか。内部までかなり浸水しているらしく、傾いたデッキの上まで水が上がっているので、いますぐ沈んでも不思議ではないように思えます。

川岸から船へ降りるための手作りのタラップがありますが、しばらく使われていないようです。

いまは取り外されていますが、昨年までタラップの入り口には郵便受けが置かれていました。その脇の水道設備は、使われぬまま今も残っています。現在ここに住む方はいないようです。

船上のプレハブ小屋には、生活するための設備がいろいろ備えられてるようです。赤さびの浮いたプロパンが2本ありますが、水に浸り始めているのでちょっと心配ですね。

デッキの下の船体は水面の下にほとんど沈んでいますが、数年前までは舷側に並んだ窓が見えて、2階建てのアパートが川に浮いているようでした。

かつて同じタイプのダルマ船が、劇団のシアターとして使われたこともあったということですから、内部は意外なほど広いようです。

川岸に残るダルマ船の記憶

そもそもダルマ船は、横浜港の沖合に停泊した大型貨物船と岸壁を往復して貨物運搬に活躍していました。1970年頃にその数は最も多くなり、横浜港全体で1700隻以上が稼動していたといいます。船を住居としながら海上運搬を営む人たちもいたようです。

ところが、コンテナ船の導入によってダルマ船の需要が激減。数多くの船が中村川・堀川や大岡川の河口付近に係留されたままとなりました。やがて沈没したり朽ち果てたり撤去されて数は減っていき、残った一部のダルマ船は飲食店や簡易宿泊所として使われることもありました。そして中村川で最後の一隻となったのが、このダルマ船です。

中村川・堀川沿いを歩くと、両岸に数多くの係留杭があるのが分かります。岸壁にダルマ船が係留されていたこともあったのでしょうか、杭に巻き付いたままのロープが残っているところもあります。

船舶には自動車と違って購入時に保管場所を義務付ける法令はありませんが、ダルマ船は不法係留と見なされ、川岸には船の移動を勧告する看板が立てられています。

河川法では、河川の管理者(県)の許可なく船舶を係留したり、桟橋や係留杭などを設置することを禁止しています。

また横浜市は「船舶の放置防止に関する条例」で船舶の放置を禁止。神奈川県は平成13年に大岡川水系の河川を「重点的撤去区域」に指定して、不法係留船対策に取り組んでいます。

近年の不法係留船の隻数の推移については、神奈川県HPをご覧ください。

モバイルバージョンを終了