関内新聞

関内名店の代名詞、匠が生み出す日本料理、空海本店

知名度が高い空海本店の佇まい

関内に足を運ぶようになってから数年が経っているのに、いまだ訪れたことのなかった空海本店。

知名度の高さから、「まだ自分にはハードルが高いのでは…」と、これまで二の足を踏んでいたが、ついに空海本店へ訪れるチャンスがやってきた!

その日、初めての訪問に緊張と高揚が交じった足取りで、関内の中心とも言える弁天通りへ向かうと、存在感たっぷりに目に飛び込んできた空海の看板。

凛と、水を打ったような静寂が包むエントランスに、温かく灯る空海の表行燈が『こちらへどうぞ』とうながしてくれた。

大将:佐藤知良氏

暖簾をくぐり、店舗へ歩を進めると目の前にカウンターが広がり、その向こうで黙々と手を動かす大将の姿が大きく見えた。

自身の手元を見つめ、寡黙に調理を進める真剣な面持ちの大将。しかし興味を惹かれる。

「話を聞いてみたい!」。

大将の目の前、カウンターの席に座った。

店内を見渡すと、頭上に掲げられた表彰状が。そう、この空海本店の名を横浜のみならず都内にまで轟かせる所以に、大将である代表の佐藤知良氏が受賞した『厚生労働大臣賞』がある。

調理師として尽力してきた功績が、国によって讃えられた名誉な賞であることは言わずもがな、ここに至るまでには横浜の市長賞に始まり、推薦のみで選ばれし、国によって『匠』が証明されたものだ。

しかし当の本人はこの名誉を鼻にかけることなく、むしろひょうひょうと気さくに自らの歩みを語ってくれた。

佐藤氏が料理の世界に入り修行を始めたのは18歳の時。しかし未来は料理人として人々を喜ばせる素地はすでに幼いころから備わっていた。

まずは素質。食べ物の食べ方を身体が知っていたこんなエピソードがある。

トーストパンを食べるとき、無意識にバターが塗られた面を下に向け、舌でバターを味わい食していた姿をみて周りの大人たちは、「この子は料理人になるのでは」と予知していたという。

さらに学生の頃、先生の厚意で行われていた課外授業の後には、育ち盛りの子供たちのために蕎麦やラーメン、寿司などを作って食べさせてくれた嬉しさなどが、佐藤氏の料理人としてのベースとなった。

そんな佐藤氏が創りだす料理の数々は、四季折々の美をベースに五感にうったえ感動を呼ぶといっても過言ではない。さあ、ファンを集わせる料理を味わいつくす!!

空海本店の特別懐石コースを堪能

この日いただいたのは、空海の特別懐石コース、お得感満載でもっとも人気!

【主菜】

烏賊黒造り、峰岡豆腐 味噌乗せ 塩ベーコン、チーズミルクレーズン、はりはり大根・ゆず酢漬け、赤海老油霜

ひと口サイズの酒の、いわゆるアテがお皿に並ぶ。多彩な酒菜に箸を迷わせつつ、食感、塩み、甘み、旨みなど、それぞれの個性を楽しみ、酒を口に含む。

日本酒

酒・・・。

空海の料理に華を添えるのは、現在『幻の酒』の代名詞と言っても過言ではない十四代のラインナップから選んだのは本丸。

アタックにヴォリュームがあり、米の甘みも強いがキレもよい。余韻にフルーティさもあり、塩気と旨みを持つこの酒菜とぴったりだ。

それにしても、こんなにも種類豊富に揃えられているなんて驚きだ。

現在『幻の酒』の代名詞と言っても過言ではない入手困難な十四代。よっぽどの信頼がないと取り扱いもできないだろうに…。

酒のプロからも厚意が寄せられている様がこんなところからも窺える。

【お造り】

豪華大鉢盛。粒貝・本鮪中とろ・活鮃・松輪鯖・金目鯛。

目の前に運ばれてきた大鉢に、思わず歓声が上がる。清らかさで目が洗われるようだ!

自家製の土佐醤油にちょんとつけ、ほお張る。脂と旨みが舌にじわーっと馴染み、広がっていく。これを日本酒で流す、また刺身を頬張る。やっぱり刺身には日本酒だなぁとつくづく思わされる。

【焼肴】

天然鰤。くるみ将油焼。レモン蕪・はじかみ。

香ばしい香りが鼻に触れる。箸を入れるとほろっとほどける、白く繊細な身を口に運べばこれまたくるみ将油の風味が鰤の上品さに野趣を与えている。

【土瓶蒸し】

囲い松茸・鯛・海老・銀杏・柏・三葉・すだち

秋のごちそうがこの小さな土瓶に詰まっている。

まずはお猪口に出汁を注ぎ香りを楽しむ。なんと芳しい出汁と松茸の風味か。まずはそのままいただき、佐藤氏の織なす食材とのハーモニー堪能。

繊細にして芳醇。目の前に秋の山の里が浮かぶようだ。

スダチを搾ってまた出汁をいただく。じんわりと身体が温まっていくのを感じるのはこの料理の温度のせいなのか、それとも松茸や鯛の食感に、銀杏に秋を感じ高揚しているのか、いずれにしても食事をいただき、心も身体も全身で喜びを感じている。

【炊合せ】

百合根饅頭(鴨丸)・大徳寺麩・小松菜・紅葉麩 紅葉あん

鮮やかな器を開けると紅葉の麩が、これまた秋の趣向が凝らされている。ほくほくとした食感に癒される。

【洋皿】

和牛霜降りヒレステーキ 付野菜・空海のぽん酢

A4ランクのヒレステーキは単品でオーダーすると3,500円になるという。

コース11,000円(税別)、クーポンを使用すれば7,800円(税別)というこの特価メニュー構成で、ひと品ひと品がコスパの高さにまた驚かされた。

【酢の物】

津軽盛り ぼたん海老・活帆立貝・つぶ貝・生クラゲ・胡瓜・吉野酢

メインディッシュが終わればフィニッシュ、と思いきや、なんとここで口直しの酢の物が。と言っても、想像をはるかに超えたなんともゴージャスなこのひと品。

半身たっぷりにリンゴの身を使い柔らかく甘やかに、自然の酸味はそのままに、さらに酢の物として完成されている。

佐藤氏のレパートリーの多様さ、自由さを存分に味わう料理のひとつだろう。

目の前に飾られた鮮やかな佞武多の画は、聞けば女将さんの作品という。

力強く大胆でありながら繊細。相反する要素が共存しひとつの作品となっている。

どちらを欠いても作品は完成しない。

この緩急のような、一見するとつじつまがあわない要素の両立が空海そのものを表しているのかもしれないと、ふと感じさせられた。

【お食事】

鯛茶漬け 浅葱・海苔 香の物

胡麻の風味を纏った鯛の身を乗せ、さらさらといただきフィニッシュ。

【水菓子】

メロン

別腹のメロンとお茶をいただき、今日の出会いを反芻。

匠、空海本店を満喫し終え

匠、厚生労働大臣賞…

そんな言葉から想像していた日本料理・空海は、ぴんと張り詰めた緊張感の高い場かと思っていたが、それは佐藤氏の思いと技が詰まったお皿の上の料理ひと品ひと品だった。

おもてなしの心をベースにした店つくり、暖かい雰囲気に癒されたいファンが足しげく通い集う理由はひと言では語れない。

あえて言うなら、心をハレの日にしてくれる。平安時代、人々に愛され求められた弘法大師・空海、平成の現代にその名は関内に掲げられ、人々を魅了してやまない。

ショップデータ

日本料理 空海本店
  • 横浜市中区弁天通1-15-1
    アコルデ横濱関内 B1F
  • TEL:045-641-9039
  • 営業時間:
    (昼)月-金/11:30-14:00(L.O.13:30)
    (夜)月-土/17:00-23:00(L.O.22:30)、日・祝/17:00-22:00(L.O.21:30)
  • 定休日:毎月・第1日曜


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