関内新聞

ワインボトルが燈る頃、ポンテ(橋)を渡り異空間へと誘われる。

「秋の日はつるべ落とし」。夕刻も18時になり、ほんのり燈り始める関内。一軒のイタリアンレストラン、Ponte(ポンテ)のオープン時間だ。

階段をおり、そのドアを開く。

店に入りまず目に飛び込む、ゆったりと椅子が置かれた奥行きの広いダイニングカウンター。その向こうに明るく開かれたオープンキッチン。そこで忙しく手を動かすシェフの姿とは対照的な静寂を保つテーブルは、街の喧騒から逃れ四次元の世界に渡ってきた…。

そう、あの階段、あの扉は異空間へのポンテ=橋だったのか。

特筆したいのはワイン。設えられたセラーには約600本のワイン。すべてイタリア産だ。

さらに店内にもセラーが置かれ、料理に、そして好みや気分を(もちろん価格も)伝えワインを選んでもらえる。

毎日決められたグラスワインはなく、希望を伝えれば応えてくれるオーナーソムリエの橋本氏に相談しよう。イタリアワインのエキスパートだ。

2016年6月、関内の某有名イタリアンレストランから独立オープン。プロフェッショナルとしてのソムリエ歴は15年。

この業界に足を踏み入れてからというもの、イタリア料理店での経験が畑となり、実となったのがイタリアンレストランのオーナー。

旬の素材を活かした調理でおもてなしをしたいとの思いで、あえてイタリアの地方色にこだわらない。

食事のオーダーは、1人前プレートをふたりでシェアするスタイル。もちろん、ひとりひとり別皿に盛られ供出される。

アンティパスト、パスタも肉料理もこのスタイルで、負担なくコースのように料理が楽しめるという、日本人の嗜好を経験から知る橋本氏の気遣いが感じられる。

 
さあ、料理とワインのマリアージュの一部をご紹介しよう。

まずは冷たい前菜から、アイナメのカルパッチョ。ワインはヴェルデッキオ・デ・カステッリ・ディ・イエージ。

フレッシュトマトソースと柚子をきかせたソースで爽やかさとアクセントを、オリーヴオイルで旨みをコーティング。しっとりとしたアイナメの身が舌の上に乗ると、体温でじわーっと甘みが口に溶け広がる。

ワインはイタリア・マルケ州の地ぶどう、ヴェルデッキオ。

フレッシュな柑橘系のニュアンスを持つワインで、シーフードに相性が良いとされている。

今回こちらでいただいたヴェルデッキオ・デ・カステッリ・ディ・イエージは、柑橘系といってもレモンやライムといった若さばかりが際立つものではなく、淡い山吹の色調を持ち、心地よい酸、そしてアーモンドのような香ばしさが、フレッシュなアイナメのひと皿に奥行きを与えている。



続く温かい前菜には、トリッパのトマト煮込み。

塩みに頼らない、トマトのジューシーさをまとったトリッパ(ハチノス)は洗練され、まるでオーダーメイドで新調した服を着こなす壮丁のよう。よくよく味わうと、爽やかなハーブがアクセントになっていることに気づく。

なんだろう…?

馴染みある風味なのに出てこない名前。素直にシェフにたずねると、答えはミント。ミラノ風だという。なるほど、ミントといえばデザートに飾られた生クリームの上にちょこんと乗っているイメージしかなかった。イタリア料理の発想の豊かさを感じさせられる。

あわせるワインはカンテ、テラーノ2009。

熟れた赤い果実、チェリーのような甘みとキレイな酸を持つワインは、トマトソースが持つ酸味と同調し、トリッパが持つ重厚なイメージになりがちなマリアージュを軽快にしている。

続くパスタは、スカンピとアボカドのクリームソース リングィーネ。

ぽってりとしたクリームソースとは異なり、さらりとなめらかなソース。火が通ってねっとりさとコクを増したアボカドとの相性はよく、ここにスカンピ(アカザエビ)から出る旨みと塩けが加わる。リングィーネに絡め口に運べば、三位一体完成の味わいだ。

選ばれたワインは白。マルカート、ピーニョ ソアヴェ・クラシッコ2013。フレッシュな酸とコクも持ちあわせる辛口ワイン。ふくよかな味わいをきりっと締めるものとなる。

メインディッシュは仔羊の炭火焼き。厳選された素材、仔羊はオーストラリア産のもの。

炭火のおかげでじんわりと焼き上げられた肉は、表面にじゅうぶん焼き色をつけている。その身にナイフを入れると滑るようにひと口大に。中心はピンク色が保たれているのがわかる。

口に運びさらに実感する、なんと柔らかいことか。噛むごとにジューシーに肉汁が喉に流れるとともに、炭火の香ばしさ、肉の甘み、野性味を伴う旨みが体に浸透されていくようだ。

あわせたワインはサエッタ 2012 キャンティ・クラシッコ・リゼルヴァ、モンテ・ベルナルディ。なんと年間3400本しか生産されない貴重ワイン。

サエッタという名前の由来は「キューピッドが人間の心を射抜く矢」であり、このひと皿とあわせることにより、まさにズキュンとハートを射抜かれることだろう。

前述のとおりオーダーは、ひと皿をふたりでシェアするのでアラカルトでこの4皿をいただけばコースのように食事を楽しむことができる。合わせるワインはもちろん経験豊富なソムリエに任せるもよし、自身の好みのワインをあわせるのもよし、楽しみ方は自由自在だ。

オープン時間は18時から、なんと27時まで!!深夜でもメニューは変わらず食事ができるという点も有難い。(ラストオーダーは26時)

テーブル席はもちろんカウンター席でも、ゆったりと置かれた椅子で隣の人とぶつかることはなく、また店内の照明もテーブルの上や足元などは明るく照らされているが、室内で客同士の視線が気にならないほどに施されている。

ひとりでも、ふたりでも。メニューもワインも相談し、たまにはこんな雰囲気の中、一期一会のディナーを楽しみたいものだ。

ショップデータ

Ponte
  • 横浜市中区太田町1-11-3
    グリーンビルB1F
  • TEL:045-306-7226
  • 営業時間:18:00~3:00(L.O. 2:00)
  • 定休日:日曜・祝日

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