友達を関内に連れて行くから…。
そんなことを珍しくアイツが言ったのは1週間ほど前のこと。
連休の谷間の金曜の昼下がり。どうせ仕事も忙しくないだろうからと、友達を連れて関内に繰り出したいと言って来た。
目立つところで待ち合わせにして。
関内には散々連れてきているのに、未だ素人のようなことを言うアイツ。
何処が良いかと思慮した末に選んだのは、JR関内駅の北口から関内大通りを海に向かい進み、尾上町の交差点を渡ると直ぐに目につくこの店だった。
築地銀だこハイボール酒場 関内店
関内大通りと常盤町通りの交差点の角にあるこの店の立地は、関内の入口と呼ぶにふさわしい場所。
幾多に渡り関内を連れまわしているというのに、迷子になっては困ると情けないことを言うアイツとの待ち合わせに、ココなら打ってつけの場所だろう。
アイツはどっちから来るんだ?
連休の初めは天気が崩れる日が何日かあったが、5月に入って数日たった連休の中日からは、初夏を思わせるような日となった。
休み前の最高の天気の中の昼下がりには、ショワショワした飲み物で喉を潤し、明るいうちから気分を上げていきたくなってしまう。
まさか迷子になってはいないだろうな?
これ以上にない場所にあるお店で待ち合わせをしてやったのに、道に迷っているわけではなかろうか。
ちょうど待ち合わせの時間になったというのに、常盤町通りを見ても、関内大通りを見ても、アイツの姿はまだない。
まぁ、いいか。
ガラス張りになった店頭では、軽やかな手さばきで、軽快にクルクルとたこ焼きを焼いている姿が見える。
ショーでも見ているような気にさせてくれるその姿に、普段なら少しでも待つことを嫌う胃袋も、「許してやれよ」と、穏やかな気持ちになってしまう。
それにしても見事だ。
綺麗に整列する可愛らしいフォルムのたこ焼き。そこに焼き場の大きなガラスから差し込む西日。
その何とも言えない光と色の調和が、神秘的な輝きをたこ焼きに吹き込む。
先ほどまで、穏やかな気持ちで少しは待ってやれよと言っていた胃袋も、この光輝く最高の照りとなったたこ焼きを見つめていると、一気に気変わりをしてしまう。
ダメだ。もう待てない。
関西のソウルフードとして、その地位を全国でも知らしめているたこ焼き。
既に国民的ソウルフードと言っても過言ではない知名度と認知度を持つたこ焼きを、これまた気軽さと爽快さで人気が出たハイボールと一緒に楽しめる手軽なスタンディングバーとして、関西の食文化を築地から西洋へと運んでしまった銀だこだけに、店内は昼下がりから混み合っている。
もう先に入って待つ!
どこに陣取るか…。
そういえばアイツは、どんな友達を連れてくるんだ?
何か折り入って話があるとも言っていたような気もするが、それなら横並びのカウンターじゃない方がいいか。
円卓のテーブルに丸くて可愛いたこ焼きを囲みながら話をした方が、もしかして複雑な話をされた時にも、話が丸く収まって良いかも知れないな。
どぉ…
こぉ…
にぃ…
…、…ん!?
乾杯!チン!!
って、おいっ(><)
パクパク隊:
あら、タイミング悪く現れるのね。
ちょうど今、ハイボールが出てきたところだったのに…。
友達:
こんにちは。
私は待とうって言ったんですけども…。
待とうと思ってくれていたわりには、大きなサイズのハイボールを頼んでいらっしゃいますが…。と声に出しそうになるのを我慢するところも、可愛いフォルムのたこ焼きを眺めて来た今日の胃袋は穏やかな気持ちで間違いないようだな。
それに、この店の造りはスタンディングで気軽に手軽なたこ焼きを楽しませるのに、最高に居心地の良い空間に仕立てあげられている。
流行りのハイボールを全面に推し、西洋の酒場で味わう関西のソウルフードを、異国情緒でラッピングしてしまうような最高の空間。
照明だって、ほら。
たこ焼きが生まれた時から持っていただろう、屋台というイメージを全く感じさせず、お洒落な英国の酒場でゴルフのラウンド上がりの紳士が、ゴルフボールをハイボールにつけ変身させてしまったたこ焼きに映し出しているようだ。
たこのおつまみ ガルシア風
たこ焼き屋でハイボールと共に、とりあえずの一品として頼むおつまみは、これまたお洒落に頬紅を塗った、スパイシーなスペイン女性と恋に落ちた感覚にさせてくれる。
パクパク隊:
あっ。この人ね、食べる物が出てくるたびに、訳のわからない表現をすることがあるけど、気にしないで食べてね。
友達:
この蛸、柔らかく少しだけ茹でられて食感が良いし、後からピリッとくる感じを、炭酸の効いたハイボールがスッと洗い流してくれるから、相性抜群の後を引く美味しさね。
…
ぜったいうまい!!たこ焼き
パクパク隊:
キャー、来た来た♪
やっぱりたこ焼きには、青のりと鰹節が必須よね。
友達:
それに、ソースの味とマヨネーズが、関西の粉ものの極みみたいなものだよねぇ。
友達:
皮がパリッとしてるのに、中はトロッとして、それにタコはプリプリっ♪♪
パクパク隊:
あ…、熱い。
慌てて食べちゃったから、口の中が火傷しそうになったけど、ホクホクで美味しいわ♪
な、何なんだ。
すっかり出番が無くなってしまったように出遅れてしまったが、この二人のグルメレポーターのような満点のコメントは、何なんだろうか?
パクパク隊:
こんなお洒落にたこ焼きを食べれるスタンディングの酒場でしょ?
女子だって、こんなにお洒落だったら、たこ焼きとハイボールでキャッキャいって騒ぎたいものよ。
友達:
ハイボールって、オジさんの飲み物というより、女子の飲み物だわね。
たこ焼きのソースの濃い味との相性もバッチリだし、ショワショワの超炭酸が熱々のたこ焼きを頬張った口の中を一気に冷ましてくれるし…。
ほぅ。
なかなか良いコメントをする女子だ。
最近、アイツのコメントもマンネリしそうな気配もするし、たまにはこの女子を混ぜて関内に繰り出すのも悪くないか。
それには、何か愛称が必要かな…。
てりたま
オーソドックスなたこ焼きも良いが、変わり種も味わってみよう。
チーズ明太子
パクパク隊:
じゃ、私がてりたま食べてコメントする。
友達:
じゃ、私はチーズ明太子を食べてコメントするね。
関西では1舟に8個から10個のたこ焼きが乗っているのが一般的なような気もするが、変わり種のたこ焼きを色々とと味わうのには、4個入りで色々とオーダーできるのが嬉しいな。
これなら、オーソドックスなたこ焼きを味わった後に、ハイボールで気分よくなって仲間と話に盛り上がり、話に花が咲き盛り上がりカロリーを少し消費した後、トッピングされた変わり種をつまみに、またハイボールを飲んで盛り上がれるっていう算段もとれるな。
それで、お二人さん。
そのトッピングが乗った、変わり種のたこ焼きのお味はいかがですか。
コメントするって言ったんだから、責任もって、最高の表現をしておくれよ。
パクパク隊:
てりたまって、たまごサラダがのってるんだ♪
たまごが大きめにカットされてゴロッとしていて、パリッとした皮にフワフワした中身のたこ焼きと、食感の相性が最高に美味しいわ。
友達:
熱々のたこ焼きの熱でトロッと溶けたチーズのトッピングに、明太子マヨネーズは、女性に嬉しいトッピングね♪
たこ焼きが生まれた時からあった組み合わせと言ってもおかしくないと思うわ。チーズとマヨネーズとソースの相性は、日米欧のコラボレーションって言った感じだわ。
ふ~~ん。
なんと初体験にして、合格点のコメントを連発してくれる女子だな。
それでは君をモグモグ隊と名付けてやろう。
それにしても気になるのは、アイツと新生モグモグ隊の女子も、二人とも表現の中に使った
パリっとしたたこ焼きの皮の食感は、どうやって生まれているんだろうか。
店員さん:
香ばしい風味とパリッとした食感は、銀だこの特長なんですよ。
天然の植物コレステロールが豊富に含まれたコーンサラダ油を仕上げに使っているので、体にも優しいですしおいしさを一層引き立ててると思いませんか?
関西風のフワッとした柔らかい食感のたこ焼きがお好みな方には、通なお客様の頼み方として、
仕上げ無しと注文していただけると、フワッとした食感のたこ焼きもお楽しみいただくことができますよ。通常は仕上げが入りますので、仕上げ無しの場合は提供するのに、少々お時間をいただきますけど…。
いつの間にか、楽しい雰囲気の酒場で、女子2名がキャッキャとたこ焼きを頬張りナイスなコメントをするもんだから、すっかりと宴会のテーブルのようになってしまっているではないか。
まぁ、それも関西のソウルフードを、お洒落にハイボールとスタンディングで手軽に楽しませてくれる、この店ならではの楽しみ方の一つなのかも知れないな。
友達改めモグモグ隊:
またご一緒させてくださいね。
何だか普通にたこ焼きを楽しむだけじゃなく、口の中の感覚を研ぎ澄ませながら感じたことを言葉で表現することで、より一層たこ焼きの味を堪能することができたみたい。
パクパク隊:
今日はあの人の出番が少なかったわね♪
ま、実はあの人は関西の生まれだから、たこ焼きを語らせると長くなりそうだったから、ちょうど良いかも知れないわね。
何がちょうど良いんだ…。
女子でも関西のソウルフードを気軽楽しめるハイボール酒場だって事を感じてもらうために、言葉少なめに故郷の味を楽しんでいただけだということがわからないのだろうか。
アイツといい、新しくモグモグ隊を任命したこの子といい、たこ焼きはちょっとした心遣いとして喜ばれる手土産になるということを知らないみたいだな。
さっき銀だこのパリッとした食感の秘訣と、通っぽい注文の仕方で違いを楽しめることを教えてくれた、可愛いあの店員さんにお土産を準備してもらってるってところが、君たちとは違うってことをわかってもらいたいもんだ。
この後に行くお店の店主は、確か女性だったはずだ。
これだけ女子二人が楽しんだたこ焼きだから、きっと喜んでくれるに違いない。
どうせ、この子もついて来るというんだろうから、この子にお土産を持たせて次の店に行くとしよう。
気軽に楽しめる関西のソウルフードを、清涼感抜群の超炭酸ハイボールと楽しませてくれるなんて、手軽に酔い始めたい昼下がりの関内の飲み始めにちょうど良い店だな。
あ~そうか。
だから、関内の入口と言っても良い店だと、この店の店主が言っていたのか…。
ショップデータ
- 築地銀だこハイボール酒場 関内店
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- 横浜市中区常盤町3-24
サンビル - TEL:045-680-6577
- 営業時間:
11:00~23:00(L.O. 22:30) - 定休日:無休
- 横浜市中区常盤町3-24
【関内新聞読者特典】
事前に「関内新聞見たよ」と来店すると、ハイボール1杯 サービス。