アイツを少し驚かせてやろう
近頃、仕事の手伝いをさせることが増えたし、たまにはデートっぽいことでもしてみるか…。
そんな思いつきから、アイツに声をかけることにした。
取材には無くてはならない存在になりつつあるアイツは、パクパク隊として一部の読者に人気の存在になっているらしい。
さっき掛かって来た電話の相手も、パクパク隊のアイツのことが気になると言っていた。そんなことを言われてしまっては、アイツを外しては記事にし難くなってしまうじゃないか。
星でも見に行かないか？
その誘いにアイツは、直ぐに乗って来た。
デートっぽいと言っても、無暗やたらに歩き回るのは勘弁だ。美味い食事をしながら酒を飲み、それでいてそれなり雰囲気の出せる店で腰を据えたい。
そんな場所がある。
事前のリサーチで既に、アイツが喜びそうな店を決めていた。
プラネットBar 星蔵
馬車道を少し入ったところの薬局の角を曲がった相生町にあるこの店は、ゆっくり寛ぎ星空を眺めながら酒はもちろん、美味い食事もとれると調べがついている。
無意味に歩き回ることが嫌いだから、一度で全ての願望を叶えてくれる店が良い。
じゃぁ、入るか…。
きゃっ（*＾＾*）
パクパク隊：
これがお店の中なの？
真っ暗で何も見えないけど、星が綺麗ね。
そうだろう。
たまにはデートっぽいことをしてみるのも良いよな。
だからこの店にしたんだ。
星空を眺めるなんて、まさにデートっぽいと思わないか。
さて、どこに座るか…。
初めて来る店だ。
ここはやはり店の人と話せるカウンターが良いだろう。
そうだったな。
ここはBarだったんだ。酒の種類も豊富に用意しているみたいだ。そういえば、さっき入ってきた店の入り口の看板にも、「プラネットBar」と書いてあった。
ニクイじゃないか…。
今までも色んなBarに立ち寄ってきたが、プラネットの冠を付けるBarには出くわしたことが無かった。
良いコンセプトで店づくりをしているな。
いったいどんな人が、こんな素敵な店を作っているんだ。
この馬車道で、そして関内の街で星空を魅せ、ロマンティックな横浜の夜を奏でてくれるのはどんな人だ。
オーナーの 牧野 一郎 さん
牧野さん：
いらっしゃい。うちはね、星をコンセプトにした店なんだ。
小さな店だけど約20万個以上の星を投影機で写し、関内の隠れ家的くつろぎのダイニングバーとしてやっているよ。
パクパク隊：
あぁ～、ようやく目が慣れてきたわ。
さっきまで本当に真っ暗で、星空だけしか見えなかったから、ここが関内だとも馬車道のBarだともわからなかったぐらい。
牧野さん：
それだけじゃないよ。
星空にちなんだ名前の付いたお酒もおいてあるんだ。
何か作りましょうか？
パクパク隊：
星空にちなんだ名前の付いたお酒？
なんだか素敵ね。
牧野さん：
じゃぁ、一杯目はお二人の星座のカクテルを飲んでみてよ。
何だと!? 星座のカクテルだと？
牧野さん：
まずは魚座ね。
ギリシア神話によると、美の女神アプロディーテーと子供のエロスが、川のそばを歩いてたところに突然、怪物デュポンが現れ、驚いた2人が魚になって川に逃げた。それが魚座だね。
牧野さん：
魚座をモチーフにしたカクテル『ピスケス-Pisces-』は、アプロディーテーとエロスをジンで出来たゼリーを2匹の魚に見立て、グリーンオリーブで怪物デュポンをイメージしたんだ。
牧野さん：
次は乙女座だったね。
乙女座には諸説あるんだけど、星蔵では女神デメテルとその娘ペルセフォーネをイメージして、カクテルを作ってるんだ。
乙女座をモチーフにしたカクテル『ヴィルゴ -Virgo-』は、神話のイメージと乙女座が持つ可憐なイメージを合わせて、チンザノドライをベースにクランベリージュースと、ざくろのグレナンデンシロップで淡い桃色にして、そこに摘みたてのミントの葉を沈めてるんだ。
妖精と花を積んでいたペルセフォーネが冥神ハーデスにさらわれて、冥界で過ごす掟に縛られた。そして冬という季節が生まれた。そのイメージだよ。
乙女座カクテル『ヴィルゴ -Virgo-』
パクパク隊：
ちょっと甘めだけど、沈んでいるミントの葉で爽やかな感じのカクテルね。
乙女座が可憐なイメージ？私にぴったりのカクテルだわ。
可憐なイメージね…。（汗
そんなことが脳裏によぎったが、口にするのはやめておこう。
今日はデートっぽいことをするために、コイツを呼んだんだ。
それにせっかくいい雰囲気の店を見つけたんだ。
思っても口にしない。
それが賢明だろう…。
魚座『ピスケス-Pisces-』
パクパク隊：
あら？魚座のカクテルも美味しそうね。
ちょっと、先に飲ませてね。
お、おいっ！
またやられてしまった。どうしていつもこうなんだ…。
さっきまで、乙女座の可憐なイメージって言っていた奴は誰なんだ。
まぁいい。今日はデートっぽいってことが大切なんだ。
パクパク隊：
少し炭酸が効いてて、すっきりして飲みやすいわ。
牧野さん：
飲みやすいからって、一気に飲んだらダメですよ。
魚座カクテルはマティーニのバリエーションスタイルだから、結構強いお酒だよ。
ジンで出来たゼリーはもちろん美味しいけど、アプロディーテーとエロスみたいに、川底で迷子にならないように気を付けてくださいね。（笑
それにしても、この店。まるで宇宙空間に彷徨っている気分にさせてくれるな。
星座カクテルで程よく酔い心地よくなった身体は、まるで宇宙空間に放り出された宇宙飛行士にでもなった気分だ。
無重力スペースに身体を浮かべるために酒を飲む。
最高じゃないか！
日本全国Barはさまざまあるが、馬車道にこんな最高の気分で飲ませてくれるBarがあるとは…。
関内という街は、どこまででも魅了してくれる街だな。
…
……
………あれ？
どこへ行った？
いつの間にそんなとこに行ったんだ。
パクパク隊：
こっちも素敵よ。目の前にも上にも星空が拡がっている。
ここに座っていると、本当に宇宙空間に居るみたい。
牧野さん：
よく観ててご覧。
そのうち流れ星が出てくるよ。
何だと？
流れ星までも出てくるのか。どこまでも星空を追求しているんだ。
いや、違う。
店に入った瞬間から、酒を口にするその時も全て、
宇宙空間に投げ出してくれているんだ。
そろそろ、食事が出てくる頃か。
いかん、店の雰囲気に圧倒されて、食べることを忘れそうになるところだった。
食事に合わせるには、やはり赤だ。
12星座のワイン ～『乙女座』～
何だと、星座毎のワインも用意しているのか。
さっき店のコンセプトを言っていたが、どこまでも星なんだな。
どこまでもこだわりを追及しているこの店、食べる物にも絶対期待ができる。
よし、来た。
このこだわりの宇宙空間で出てくる一品目は何だ？
星蔵彩りピクルス
ほう…、ピクルスか。
普段は日本酒にお新香が定番になっている親父だが、今はデートっぽいってやつだ。
アイツも連れていることだし、お新香ではなくピクルスの方が雰囲気が出るってもんだ。
パクパク隊：
うん！このピクルス美味しい。酸っぱいだけじゃないし、何かちょっと風味が感じられるわ。
何だろ…。今まで食べたピクルスとは、ちょっと違う気がする。
長野 希和子 さん
長野さん：
こちらは星蔵自慢の自家製ピクルスです。
季節毎の野菜を3種類のペッパーと、2種類のお酢、ハーブ等を使って、独自の作り方で仕上げてます。
長野さん：
お野菜は三浦の野菜を中心に、旬のお野菜を漬けてます。
私は野菜ソムリエの資格を持っているので、季節毎の旬の野菜、三浦のお野菜を選んでお店で作る、自慢のピクルスなんですよ。
ほぅ。これだな。
カウンターの端っこに可愛く鎮座しているこの瓶の壺でつけられているのが、野菜ソムリエの彼女が作っているという星蔵自慢のピクルスか。
確かに、
美味いぞ。
アイツの言うように、酸っぱいだけのピクルスじゃない。
それに変な甘さもなく、ちょうど良い。
そうか、ペッパーだ！
この酸っぱさの奥にある、何とも爽やかな風味は、ペッパーが効いてるんだな。
後を引く美味さだな。
箸休め、いや主役にもツマミにもなり得る憎たらしいやつだ。
それにしても、本当に雰囲気の良い店だ。
ちょっとデートっぽくなってきて、アイツの機嫌も良いみたいだ。
さて、次は何が出てくる？
三浦直送野菜の星蔵サラダ
これは綺麗に飾られているサラダだな。それに見たこともないような野菜がいっぱいだ。
飾り付けも夜空に煌めく星たちが、無邪気にはしゃいでいるような感じか。
どこまで徹底的に、こだわりを見せれば気が済む。
パクパク隊：
もういい？食べちゃうわよ。
その盛り付けの美しさに箸をつけるのを躊躇していたが、ムードってやつがなくなるじゃないか。
まぁ、仕方がないか。
それがコイツの仕事だったな。
デートっぽいことを目指してこの店に来たんだが、既に食べることに夢中になっているヤツがいた。
赤い色したニンジンが、普通のニンジンよりも甘く感じると、野菜不足の普段の生活では口にすることが少なく、この瞬間が超貴重だと感じていたというのに。
伝説の明太パスタ
これはまた、飾り付けが美しいパスタだ。
明太か…。
明太パスタには無くてはならない刻み海苔が、パスタ麺の真上に掛けられるのではなく、周りに散らされているところが、宇宙に一粒赤く輝く星を思わせてくれる明太を更に強調しているようだ。
ここにも宇宙がある。
パクパク隊：
じゃ、取り分けていいかしら？
ほう。優しいところもあるもんだ。
せっかく綺麗に飾り付けられているパスタ。なかなか手を出しにくいヤツでもあるが、ほんの少し細めのパスタに和えられた明太と海苔の風味が食欲をそそる。
パクパク隊：
アナタのいう通り、明太と海苔の風味が良いわね。
細めのパスタだから、たくさんの明太がパスタ麺に絡み合って、そこに海苔の良い風味がするわ。
なんだ…。
デートっぽいつもりだったのに、すっかり潜入取材をしているようなコメントをしてくれるじゃないか。
仕事を忘れて良いつもりで連れて来てやったのに、それではさっきからこの店によって宇宙空間に投げ出されたままになっている意識を連れて戻さなくてはならない。
流星の鴨サラダ
牧野さん：
普段はね、パーティで出すことが多いんだけど、星尽くしの最後にはやっぱりこれかな。
鴨肉を流れ星の頭に見立て、星が流れているように野菜をデザインして盛り付けてあるんだよ。
パクパク隊：
あら、これもお洒落ね。
こんなお料理を食べさせてくれたら、きっと女の子は喜ぶわ。
なんと…。。
さっきから伝わっていないようだが、今はデートっぽいことをしようとしているんじゃないか。
何ともコイツには、色気もムードもあったもんじゃない。
ん！？
あれはもしかして、Old Grand Dadの114 Proofじゃないか。
すっかり星を食べ…、いや星をモチーフにした食事を堪能し、最高に高揚した気分になっている。
やはり、締めにはバーボンだ。
いつも決めている。このバーボンを見たら、必ず飲むと。
飲み歩きの性分だからではない。このバーボンが飲み歩きの始まりだからだ。
このバーボンに出会ったから、この今があるんだ。
店のオリジナルグラスか。
それにしっかり丸く削られた氷。バーボンのロックはこれでなくっちゃ。
宇宙空間を追求し星をモチーフに喜ばせてくれるだけじゃなく、Barとしての格式もしっかりと持ち合わせているとは。
完敗な気分に乾杯だ！
オリジナル桜カクテル『星桜』
牧野さん：
じゃ、女性にはこちらね。
春の季節に合わせたオリジナルカクテルを最後に飲んで行ってくださいね。
桜リキュールを生クリームでクリーミーに仕上げて、上にかかっているのは桜フレークね。
パクパク隊：
甘くて美味しい。食後のデザートにちょうどいいわね。
今日は何だか飲み過ぎちゃった気分だったけど、これならもう少し飲めそう。
ふぅ…。
それにしても、この関内にこれほどまでの星空を楽しめるBarがあるとは…。
プラネットBar 星蔵。なかなかやるじゃないか。
これなら無駄に出歩くデートコースを考えなくても、この店一軒で最高な瞬間を過ごせるデートができそうだ。
いや、それだけじゃないな。
野菜ソムリエが選ぶ野菜で日ごろの食生活を改善することもできるし、一人ムードに浸りたいときに傾けるバーボンを選びに来ても良い…。
また見つけちまった…。
さて、酔っぱらったアイツを送って帰るとしよう。
SPECIAL THANKS
Photographer：石川 雅之 氏
ショップデータ
- プラネットBar 星蔵
-
- 横浜市中区相生町5-95
トラストワンビル3F - TEL：045-651-1176
- WEB：hoshizooo.com
- 営業時間：
ランチタイム（火～金）／11:30～14:00（L.O. 13:30）
バータイム（月～土）／18:00～2:00（L.O. 1:00） - 定休日：日曜・祝日
- 横浜市中区相生町5-95
【関内新聞読者特典】
事前に「関内新聞見たよ」と来店すると、生ビール or グラスワイン1杯 サービス。
※バータイム限定
