関内エリアには、今でも明治・大正・昭和戦前期に建てられた多くの近代建築が残っています。
その中でもキングの塔の愛称で知られる神奈川県庁本庁舎は格式が高く、また威風堂々としている表情が素晴らしく、関内の地を訪れる多くの観光客の目に留まる建物です。
県庁本庁舎 一般公開
その県庁本庁舎がこの日、一般公開をしていました。
日ごろ、その外観を観ながらエリアを取材していますが、これまで県庁の中に入る機会はありませんでした。そこでこのチャンスを逃すことなく、県庁の中へと足を進め、その素晴らしい近代建築の内部と、また今でも神奈川県の行政の中心として使われる施設を隈なく散策してきました。
入口を抜けた正面ホールから素晴らしい照明
この建物は昭和3年に建てられたもの。
しかしその内部は古さを一切感じさせることがありません。そう感じさせてくれるのは、玄関を抜けた正面ホールの天井に存在感を持ち優しいフォルムをしていた照明のおかげでした。
この日の一般公開では、3階にある応接室と知事室、大会議場が見学できます。
その案内に従い、まずは3階へと上がろうと正面の階段へと足を進めていきます。するとそこには、手すりに時代を感じさせる陶製の装飾灯がありました。
1階から2階へと上がる階段の踊り場には、草原にいる白馬の絵画がかけられています。
そして階段の手すりは、石の冷たさでひんやりとはしていましたが、丸みを帯びた柔らかい手触りが温もりを感じさせてくれました。
宝相華の文様
県庁本庁舎の内部には、至るところに「宝相華(ほうそうげ)」の文様が使われています。
この手すりの中央部にも宝相華をあしらったグリルがあり、先ほどの装飾灯もまた宝相華のデザインで作られているそうです。
2階から3階へ更に階を上がり、
この日の一般公開で見学できる一つ目の部屋へと進みます。
第3応接室
幾つの応接室があるかは確認しませんでしたが、こちらは第3応接室です。中央には、16個の座り心地がよさそうな椅子に囲まれた長いテーブルが置かれていました。
こちらの応接室は今でも重要な会議や、来賓の際に使われているそうです。
天井には宝相華のデザイン。
今でも現役で動く壁掛けの時計はかなり古く、恐らくこの建物ができた当時からここに掛けられているもの。
重厚感たっぷりの黒い石作りの暖炉。
綺麗に掃除されているために、現在では使われていないような感じがしましたが、使おうと思えばまだまだ現役で使えるだろうと感じられました。
この第3応接室の中で、一際目を引いたのが、こちらの絵画。いつの時代が描かれているのか、また作者も不詳とのことですが、かなり古い時代の横浜港が描かれています。
その当時から、この場所に行政の中心があったことが絵からも分かりました。
更に旧知事公舎で使われていたとみられる食器の展示があり、古くから横浜が国際都市して、異国人の来賓が多かったことを容易に想像させてくれました。
知事室
そしていよいよ神奈川県の行政のトップである、知事が使用する部屋の見学です。
県庁の一般公開の日にもデスクで仕事をしているかと思いきや、そこには本人がにこやかな表情でこちらに向かって手を振っている姿のパネルで出迎えてくれました。
さすがはメディア出身の黒岩 祐治 知事ならではのサービスです。
知事室には知事が執務を行うデスクの他に、6名掛けの応接セットがありました。
また国旗や神奈川県の旗が部屋に掲揚されていて、いかにも知事室らしい趣があり、緊張した空気感が漂っていたような気がしました。
知事のパネルの横に飾られている「いのち」という書は、黒岩知事本人が書いた書だそうです。
神奈川県の行政のトップの職を「いのち」懸けで…、という意味が込められているのでしょうか。
大会議室
通常の一般公開の時には、この部屋も実際に中に入り見学ができるそうですが、この日はなぜか4階から見るようにとの案内。
そこで会議室を見下ろす傍聴席のある4階から中の様子を見学しました。
何と驚いたことに、この日は県庁舎で初めてという結婚式が実施されていました!
どんな方がご結婚をされて、この場所で挙式を上げられたのかはわかりませんが、とにかくおめでとうございます。
するとここで、黒岩知事ご本人を発見。
何ともにこやかな笑顔で、新郎新婦と一緒に記念撮影をしていらっしゃいます。
いよいよキングの塔へ
大会議室の傍聴席がある4階から更に階を上がると、そこからはいよいよキングの塔と呼ばれる県庁のシンボルです。
生憎キングの塔の内部へは上がることはできませんでしたが、この鉄骨の階段はキングの塔の内部。
階段を作る鉄骨は、建物が建設された当時のままだそうです。
いざキングの塔を仰ぐ
これが塔部分を下から撮影したもの。
県庁の屋上が6階部分となり、先ほどの鉄骨階段を上る9階部分までが塔を形成しています。
地上からキングの塔を見ると、塔そのものがここまでの高さがあるようには感じませんが、屋上に上がってみるとこんなにも高いことがわかりました。
屋上からベイブリッジを望む
普段は入ることができない県庁の屋上は、ぐるっと周囲を見渡せるようになっていました。
更に大さん橋を望む
屋上からは大さん橋が正面に見えます。
ここから、先週来たクイーン・エリザベス号を観たら、その大きさがどれほどのものだったか、もっとよくわかったのだろうな。
取材日が近かったことで記憶も鮮明だっただけに、それは少し残念に感じました。
関内には、県庁のキングの塔の他、クイーンとジャックと呼ばれる塔もあります。
これらの塔の取材は先に行う予定ですが、まずはキングの塔から他の塔へ挨拶しておきました。
キングの塔を後に…
屋上から眺望を満喫し、またキングの塔を間近で見学したところで、今日の施設見学は終了です。
最後に4階の壁にあった旧庁舎の装飾タイルに見送られ、階下へと降りていきます。
降りる時は、レトロなこのエレベーターで一気に下ります。
中は現代のエレベーターに変わっていましたが、エレベーターの現在地階を表示するパネルが、何ともレトロで恰好良く感じました。
関内には、今でも残る近代建築がたくさんあります。
神奈川県庁舎以外にもまだまだたくさんありますので、天気の良い日にはそれらの建物を見て回るだけのも良いかと思います。
また県庁のように、実際に中を見学することができる施設もありますので、機会があれば記事にしてご紹介していきますが、まず最初の記事として、このキングの塔から始めることができて感無量。
これから散策の良い季節になりますので、皆様も是非関内にお出かけください。