関内新聞

関内で味わう敏腕ソクチョサムゲタンのチーズサムギョプサルに舌鼓

あれからどれくらいの月日が流れたのだろう…

身の回りの色んなことに変化があり、この街の喧騒に身を潜めることが少なくなって流れた日々。恐らく1年近くは、夜の街を徘徊することから遠ざかっていた。

仕事が忙しいといえばそれまでだが、色々なことに疲弊し、色々なことに嫌気がさしていたのかも知れない。

そんな鬱蒼とした気分をガラッと変えてくれる、久しぶりの嬉しい誘い。何かと共通の話題も多いあの子からの連絡で、今夜久しぶりに街に繰り出すことになっていた。

あの子とはグルメネタに時々登場するモグモグ隊のこと。レギュラーで登場していたパクパク隊が居なくなり、あの子の登場回数が増えている。ただ単純に美味しさだけを伝える食レポ記事より、街の雰囲気も含めお店の良さを伝えたいと思い、今回も物語タッチでお届けするため、あの子にも登場してもらうことにした。

今宵は接待でもなく仕事でもなく、ただ単に楽しい時間を過ごすための夜。友達を連れてくるというので、宴のお店はあの子のチョイスに任せてみる。

束草参鶏湯(ソクチョサムゲタン)という店との出会い

あの子の指示で呼び出されたのは、老舗のJAZZバーのあるベイスターズ通りと相生町通りの交差点。あの子が連れてきたお友達に軽く会釈すると、ゆっくりとお店に向かって歩き始めた。

どうやら今宵のお店は、ココからすぐの場所のよう。

しばらく夜の街のリサーチをしていなかったのに、女性を二人も連れて食事に出るのはハードルが高すぎる。味や好みにうるさい女性の事だから、リサーチ不足の結果は、直ぐに見破られてしまうとわかっていた。

待ち合わせの交差点から歩き始めて1分も経たないうちに、その外観から今夜の酒と食事のイメージがテレパシーの様に伝わる。

まぎれもなく、韓国料理のようであり、まぎれもなく汗をかきながら旨辛い食事を堪能しているイメージだった。

韓国を感じずにはいられない束草参鶏湯の店内

草原を感じさせるような深草色の壁に、青に赤に黄といったビビッとな原色が眩しく映える。

訪れたことはないが、朝鮮半島の大韓民国にトリップしたかのような錯覚。読めも書くこともできないハングル文字が、脳裏を何度も行き来する感覚

そんな期待できる嬉しいフィーリングを、駅向こうの福富町ではなく、また東京の新大久保のコリアンタウンでもなく、ここ関内の相生町で感じることができるとは。

韓国の雰囲気に統一された、何とも目に鮮やかな店内が、これから始まる楽しいひと時をより期待させてくれている。

大都会の韓国の街にあるお店というより、古き良き歴史を重んじる街で出会うべきお店に感じるのは、店内の色合いだけではなく飾られている一つ一つの物に、暖かみを覚えるからだろう。

たまには人任せに店を選んでもらうことが、新しい発見の機会をもらえる良い術なのかも知れない。久しく夜の街から離れていた自分のセンスでは、勇気を出して冒険するような店選びをしていなかっただろう。

韓国に居るかのような感覚で始まる束草参鶏湯での宴

せっかく素敵な韓国料理の店に来たんだ。ここはやっぱり韓国焼酎で盛り上がろるとしよう…、安易な思惑を描きながらあの子たちへ視線をやる。

おいおい。

「これだから困るんだよ、お嬢さんたち」と、お茶でも入っているのだろうやかんでお酌を始めたあの子たちに呆れ果てる。

郷に入っては郷に従えということわざがあるように、このタイミングは最低でも韓国ビールから韓国焼酎を選択すべきだろうに…

と、表情には出さずに、ややがっかり感を感じていた次の瞬間。

それは絶対にお茶だろう!と高を括っていたことを、嬉しく覆してくれる無条件降伏な瞬間が目の前で起こった。

茶色い液体が注がれるはずのそのやかんからは、白濁した純白な液体が小さなたらいに注がれていた。

「なんとな!」

それは韓国のもう一つの代名詞でもある、マッコリだったようだ。

見た目だけで判断した自分の浅はかさに嫌気が差しながらも、夜の巡業から少し離れて鈍っていた想像力を優しく裏切ってくれるこのお店の懐の深さを思い知る。

もしかしなくても、このお店は期待できるはず。食にうるさい女性が選び、そしてこの店内の装い。

この段階で、足を踏み入れるに必要な要素を兼ね備えていた。

「よし!今夜はたらふく食ってやる」

そういってこの店に入ってからすぐ、気になっていたこのポップにかかれたメニュー。

店名にもなっている参鶏湯は、必須アイテムとして食しておかなくてはならない。しかも、これまで入ったことがある韓国料理のお店では見たことがない、「焼きサムゲタン」。

鶏肉好きとしてはたまらない、鶏一匹まるまる焼いて出てくると、よだれが垂れるのを抑えきれなくなるようなポップにかかれた魅力的な言葉。

「ま、まずはそれを!」

豚の旨みを閉じ込めるチーズの甘味とキムチの辛味~チーズサムギョプサル

鶏肉好きが、その魅力に我慢できずにオーダーしたのに、先に違うメニューが出てきてしまう。「なぜだ!なぜだ!」と騒ぎそうになっていた時に、あの子が言った言葉。

「焼き参鶏湯は、焼き上げるのに1時間近くかかるから…」

確かにそうだな。鶏をまるまる一匹焼き上げて提供されるメニュー。本来なら、事前に予約をしておいた方が良いメニューを、鶏肉好きのわがままで「食べたい!」といったのだから、そのぐらいの時間は我慢しなくてはならないだろう。

「その間に…」とあの子が言った、このメニュー。

メインの焼きサムゲタンが出てくるまでの繋ぎ…というには失礼すぎる、こちらもステージのセンターを張れるほどのスタープレイヤーの風格。

しかも普通のサムギョプサルとは明らかに違う体裁。普通のサムギョプサルなら、豚肉が鉄板で焼かれた後、食べやすい大きさに切られ、それらをサンチュに巻いて食べるだけなのに…

このお店のこれは、まるで北海道で食べるジンギスカンの鍋の様に、センターにはお肉が位置し、周囲にはキムチとチーズが取り囲む。

「いったい、何なんだ!この料理は?」

と、驚く暇もなく、鉄板から食欲をそそる徐々に豚肉が焼けてくる音と香りが漂う。


何とも暴力的な、この肉が焼ける音。そしてさらに、踊るように溶ける黄金色のチーズ。

何から何までもが芸術的で、何から何までもが食欲をそそる演出。これだけのサムギョプサルの美しい姿は、今までに見たことがない…

このサイズで2人前というから、この店のホスピタリティの凄さが感じられる。

こんがりと焼かれた豚肉。それにキムチとチーズ。

さて、どのようにして食してやろうか…といたずらっ子のような笑みを浮かべたが、ここは正しい食べ方を聞くに限る。

美味いものを正しい食べ方をするというのが、美味いものへのリスペクト。

チーズサムギョプサルの正しい食べ方

まずは一緒に出てくる、サンチュとエゴマの葉を手に持つ。

サムギョプサルを美味しく食べるには、間違いなくこのサンチュの存在が必要だろうな。シャキシャキしたサンチュの食感に包まれた芳醇な豚肉の脂の旨みを想像しただけで、よだれが出てくるに違いない。

エゴマの葉は食べ慣れないうちはクセが強く感じるかも知れないが、サンチュと同様に豚肉の脂を爽やかに感じさせてくれる。だから、慣れるまではトライし続けた方が良いんだよ。

美味いものを食べるには、好き嫌いを言っていてはダメなんだ。

そして、チーズサムギョプサルならではのステップが、この次にやってくる。

普通のサムギョプサルなら、このまま焼けた豚肉を手に持ったサンチュの上に置くだけで良いだが、チーズサムギョプサルがチーズサムギョプサルたる所以で、黄金色に美しく溶けたチーズの中に豚肉をダイブさせる。

そして、たっぷりと豚肉にチーズのドレスをまとわせ、優しくサンチュとエゴマの葉の布団に寝かしてやるんだ。

極めつけは、ココからだ。

豚肉が寂しく感じないように、サンチュの布団に寝かせたらキムチと、白ネギ、ニンニク、青唐辛子をトッピングしてやるさ。ニンニクは臭うから…、なんてくだらないことを言っていると一生美味いもんにはあり付けない。

そして、同じように辛いからと言って、青唐辛子を仲間外れにしちゃいけない。青唐辛子はキムチとは違う辛さで、チーズサムギョプサルを頬張った口の中で存在感を発揮する。

さぁ、食すが良い!

豚肉の甘味に加えて、チーズとキムチの発酵食品同士の相性の良さが、口の中いっぱいに広がり、この世のものとは思えないほど幸せな気持ちで心がホッとするだろうさ…

…と、

またやってしまったな。美しく旨いものを見ると興奮してしまうこのクセ。久しく夜の巡業を行っていなかったことも手伝い、今宵はいつもにも増して、絶好調に興奮してしてしまったようだ。

飽きることはあり得ないが、豚肉の合間にはムール貝のアヒージョも堪能するべきだ。

どことなく辛さが際立つサムギョプサルと違って、ホッとするひと時を呼び起こしてくれる魚介。

肉料理の添え物として出されているのだろうが、どちらが主役か分からないくらいに存在感を持つアヒージョ。

決して、お弁当に添えられるパセリのような扱いをしてはならない良い相棒。

あっ!という間だな…

見事なまでに綺麗に平らげられた鉄板。ほんの少し前まで、この鉄板の上で豚肉が躍り、チーズが跳ね、ムール貝が泳いでいたとは思えないほど何もない。

お腹を空かせて来たとは言え、あれほどのボリュームを瞬間風速、竜巻が地面を這ったかのように根こそぎ無くなった鉄板。この空になった鉄板こそが、チーズサムギョプサルが如何ほど素敵な味だったかを表現しているはず。

見事としか言いようがない…

チーズトッポギという素晴らしい名脇役

もう少し参鶏湯が焼き上がるのには、時間がかかる。だからと言ってチーズサムギョプサルで興奮した胃袋は、それを待たせると、もはや暴動を起こしかねない状態だった。

誰か良い中継ぎ投手はいないか…、と指名したのがこのチーズトッポギ

韓国を代表する餅の一つ。トッポギかトックかで、いつも悩まされる苦悩の時間。チーズが続くと一瞬ためらいもしたが、トッポギとチーズがどのようなハーモニーを奏でるのか、とても興味があった。

餅好きにはたまらない、日本のそれと少し異なる食感。そのぐらいの前知識はあるが、実際のところ数えるほどしかトッポギを口にしたことはない。

ましてやそれが、チーズを被るというのだから、未知なる遭遇と呼ぶにふさわしい一品だ。

韓国唐辛子で赤く染まったスープに身を隠すトッポギ。そのかくれんぼを助けるかのようなチーズの存在。思い切ってスプーンを入れてやると、恥ずかしそうに赤い唐辛子のスープに色を染めたトッポギが現れる。

白ネギを初めとする野菜たちと一緒に泳いでいたプールからあがったトッポギは、どんなシンクロナイズドスイマーにも負けないスタイルを露わにする。

辛みと上手く調和するチーズのコク。そこに引き締まった弾力のあるトッポキが良い相性。

熱さにさえ気を付ければ、このメニューも一瞬にして無くなってしまう。参鶏湯が焼き上がるまでの中継ぎとして、ワンポイントリリーフのつもりのオーダーだったが、この実力なら抑えにもってきても惜しくないかも知れない。

チーズと唐辛子の辛味が、これほどまでに相性が良いとは…

それを発見する韓国の食文化には脱帽の一言しかないかも知れない。…脇役と呼ぶのは失礼かも知れなかった。

memo

※このチーズトッポギは、今週末(2018年5月27日(日))に開催される7回関内フード&ハイカラフェスタのブースにて、提供される予定になっているそうです。

満を持して登場する看板メニューの焼き参鶏湯

これが食べたいなら要予約。そこまで言われても食べなくてはならないのが、この焼き参鶏湯だった。

そもそもこのお店の店名に付けられている「束草(ソクチョ)」とは、ソウルから北東にバスで2時間半ほど離れた街の名前。その街で、この店のシェフの父親が参鶏湯専門店を営んでいるという。

その本場の味をも凌ぐと自信を持って提供される、漢方とハーブに漬け込まれた鶏肉をまるまる一羽焼き上げて提供されるのが、この店の自慢の一品。

今回、余りにも興奮が冷めやらない暴挙と化した胃袋のため、その焼き上げる工程を見させてもらったが、本当に手間暇かけてじっくりと焼き上げてる。

チーズサムギョプサルとチーズトッポギをゆったりと平らげる間。その鶏肉は、その最初から最後までの時の間、回転するオーブンの中で、その出番を待っていた。

しっかりと肩が温まった抑えの切り札。先発投手としても活躍できるだろう、オールラウンダーな期待のエース。いや、もしかすると4番打者を打たしてもしっかりと仕事をするだろう、今の流行の言葉を借りると二刀流な存在。

そのまま食しても、鶏肉に浸み込む漢方の香りで十分なお味だが、お好みでカレースパイス、ヤンニョムソース、それに不思議なスパイスと言われるソース陣で味を足しても良いという。

それは正に、直球ストレートでさえ160㎞を超える剛速球なのにも関わらず、フォーシームやスプリット、スライダーにカーブも交えて投げる海を渡った大投手のようだ。

もうこうなってしまっては、我が胃袋は鳴り止まないスタンディングオベーションで完膚なきまでやられた敗北を認めざるを得ない状況だ。

おっと!

まだまだ負けちゃいられない。モグモグ隊として呼んだ、あの子たちは食欲旺盛のようだ。まだ戦意を失っていないチームメイトが奮闘しているんだから、戦わずして負けを認めてはいけない。

店主によってに切り分けられた焼きサムゲタンに、戦いを挑む時間だ。

黒もち米ともやしと共に供された焼きサムゲタン。どこからどう攻めてやるかと意気込む胃袋。

お上品にナイフとフォークで立ち向かうあの子。

良い感じにボールを見極めているような感じだが、焼きサムゲタンの持ち味であるストレートな味に、押し込まれてしまっているようだ。

ハングリー精神を持って挑まなくては、世界で活躍するような魅力を持った味にはかなうまい。

そう思っていた矢先、あの子の胃袋も意地を見せ始める。

あの子が見せる最後の維持は、美しいネイルをあしらった指で鷲掴み。

お上品に食べていては、その本当の美味さは分からいという事を最後の意地として見せた。

この子の言う通りだ…

遠慮して、着飾って、オシャレして、お上品に…、そういった食べ方も悪くはないが、この焼きサムゲタンの実力を前に、躊躇する気持ちは禁物。

豪快にかぶりつき、大胆に頬張り、まるでわんぱく坊主がママに怒られるかのように、骨にへばりついた最後の肉の欠片まで食べつくすこと。

それが、この焼きサムゲタンの前では、正しい行儀作法なのかも知れない。

日本ではココだけでしか食べられないという、漢方の焼きサムゲタン。新大久保でもなく、福富町でもなく、そして本場の韓国に行かなくても、食べられるこの味に、見事なまでに完敗と言わざるを得ないだろう。

束草参鶏湯(ソクチョサムゲタン)という敏腕な店に出会って…

この店の凄さは、驚かされる味だけではない。

店のあちらこちらに貼ってあるポップのデザインは、オーナー自らが起こした物。その洗練されたデザインの中に、オーナーの嬉しい遊び心も見えたりする。

「チマチョゴる?」

希望すれば、韓国の伝統衣装であるチマチョゴリを着させてくれるという。

一見、沈静化したかのように思われる韓流ブーム。いやいや、そのブームは未だ健在だろう。チマチョゴリを着て、韓国時代劇のヒロインになった気分を味わい、そのうえで束草参鶏湯の自慢の料理に舌鼓を打つ。

どんなドラマのヒロインよりも、より韓流ドラマの素敵なヒロインになった気分を味わえる瞬間かも知れないな…

「間違いない店を見つけてしまったかもな…」

久しぶりのキメ台詞も出たところで、今宵はまっすぐ帰るとしようか…。

おっと、あの子たちを忘れてきてしまったか…(笑

memo

※今回の撮影では、小紙とメディア提携している「馬車道に来たついでに」を運営している濱ネイルのオーナーネイリストさんにモグモグ隊として手タレ登場していただきました。

ショップデータ

束草参鶏湯(ソクチョサムゲタン)
  • 横浜市中区相生町1-5 真和関内第一ビル2階
  • TEL:050-3136-0111
  • 営業時間:17:00〜23:30(L.O. 23:00)
  • 定休日:日曜
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