JR関内駅南口から、横浜スタジアムを右手にみなと大通りを歩いて10分、赤レンガと白い花崗岩(かこうがん)の組み合わせが美しい時計塔を持つ建造物がある。「ジャック」の愛称で親しまれる横浜市開港記念会館だ。
横浜市開港記念会館は、横浜の開港50周年(1909年)を記念して市民からの寄付金と公募設計により建設され、1917年に竣工。
全国の公会堂の中でも、大阪市中央公会堂と並び長い歴史を持つ公会堂だ。関東大震災(1923年)から66年後の1989年に時計塔のドームが修復された際、国の重要文化財に指定された。
設計は「辰野式フリークラシック」(外壁は赤レンガを露出し、花崗岩を配する特徴がある建築様式)が採用されており、赤と白のコントラストは華やでありながら落ち着いた雰囲気も醸し出している。
この様式を採り入れている建物は、国の重要文化財である東京駅、日本銀行本店、大阪市中央公会堂などがある。
竣工当時は貴賓室やビリヤード場、音楽会が開催できる施設を備え、横浜政財界の社交場、あるいは文化施設として時代を彩ったという。1959年に中区の公会堂として開館。現在では、メインホールである講堂と9つある会議室が貸し会議室として利用されている。
無料でお願いできるガイドボランティアとは?
「3か月前から予約できるんですが、すぐにいっぱいになってしまうほどの人気なんです」と話すのは、ボランディアガイドを務める柘植妙子さん。
部屋によっては、1時間300円で借りることができ、全館を1日貸し切っても7万円ほどだそう。たしかに、すぐに予約が埋まってしまうのも頷ける。
また、ドラマや映画の撮影にもよく使用されているそう。「映画『小さなおうち』や、ドラマでは『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)や『ロング・グッド・バイ』(NHK)で使用されました」と柘植さんが教えてくれた。
講堂と会議室以外の見学は無料。
希望すれば、柘植さんのような常駐のガイドボランディアの方が入口から最後までを無料で案内してくれる。各所に展示されている資料、芸術品、建物の構造、建築様式など様々なことを流れに沿って説明してくれるので、「ジャック」の歴史はもちろん、横浜の歴史を知ることもできる。
歴史ある風格が漂う館内を歩いていると、まるでタイムスリップしたかのような気分を味わえる。タイル張りの床、階段に続く窓、シャンデリア、どこをとっても味がある。
中でも有名なのは、2階のホールや中央階段の壁面にある宇野澤組ステンドグラス製作所の作によるステンドグラス。
美しいステンドグラス
当時の日本ではステンドグラス自体が非常に珍しいものだったため、ステンドグラスの歴史上とても価値のある作品。4枚のステンドグラスは、横浜開港当時の様子が描かれている。
「関東大震災でオリジナルは焼失してしまったので、現在のものは当時のデザインをもとに複製されました。ポーハタン号のガラスの一部は、ティファニーのものが使用されています」と柘植さん。圧倒的なスケールのステンドグラスは、見ていると時間を忘れてしまう。
2階には時計塔に続くらせん階段があり、1年に1度、6月2日の開港記念日は上に登ることができる。人数の制限などはなく、100円払えば誰でも登ることができる。今年は約300人が登ったそう。
他にも、大隈重信や皇族が利用したとされる貴賓室、今でも建設業の人たちが見学に来るほどの耐震強度を誇る錠聯鉄構法(ていれんてつこうほう)が見られる壁、和田英作画伯の油彩画の展示など、見どころ満載だ。
見学するだけでももちろん楽しめるが、会議室を借りて歴史を感じながら打ち合わせや集まりをするのもおすすめ。
横浜のシンボル「ジャック」のライトアップ
普段は公開していないメインホールの講堂と1号会議室は、月に1日だけ公開される一般公開日が設けられている。次回の開催は7/15(火)。ぜひこの機会に、今も昔も人々を惹きつける横浜のシンボル「ジャック」に足を運んでみては?
【開港記念会館アクセス】
横浜市中区本町1-6
・みなとみらい線日本大通り駅下車 徒歩1分
・JR京浜東北線・市営地下鉄関内駅下車 徒歩10分
【国指定重要文化財 横浜市開港記念会館】
開館時間:9時~22時(見学は10:00~16:00まで)
入場料:無料(貸会議室は有料)
休館日:毎月第4月曜日(祝日・休日のときは翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
2014年度の一般公開日(※日頃見られない講堂・1号会議室を公開)
7/15、8/15、9/16、10/15、11/15、12/15、1/15、2/16、3/16