空間をしっかりと広げているカウンターの先に目をやると、そこには見たこともないワインサーバーが威風堂々と鎮座する。初めて目にするその雄姿を、興味津々に見つめていると優しく近づいてくるソムリエの姿。
ソムリエの山崎さん:
こちらはワインサーバーと呼べばいいのでしょうか。ワインは空気に触れると酸化してしまうので、コルクを開けたら早めに飲む必要があります。そうすると一度に何種類も飲むことが難しくなってしまいますし、また高額のワインだと1本で何万円になることも。
ソムリエの山崎さん:
ただワインを気軽に楽しんで欲しいと思って、当店ではワインの飲み比べができるようにグラスでお出しするセットもご提供しています。それができるのは、このワインサーバーがあるからなのです。栓を抜くときも特殊な装置を使って酸素が入らないようにし、この機械から注ぐことで酸素に触れないようになっています。
そいつは嬉しいな…
大きなワインセラーもあるし、ソムリエの山崎さんもいる。ワインに詳しくないことに気後れすることなく、気軽にワインを楽しませてくれる計らい。そんな嬉しい店をなぜ今まで知らずに過ごしてきてしまっていたのか。関内で益々頑張ると決意した最初にこの店を見つけておいて良かった。
本当なら二人分のメニューをオーダーしたいが今宵は一人。それでも大好きな手長海老がカルパッチョで食べられるとなれば、無理をしてでも食べてみたい。そんなワガママもワガママにならないのがこのお店。
メニューに載っている料理は全て、ハーフサイズでも提供してくれるというから、一人の夜でも気軽に利用することができそうだ。
そして何より、このイタリアのカラスミが添えられた手長海老のカルパッチョに合わせるワインに悩まなくても良い。なぜならば、この店には相談できるソムリエの山崎さんがいてくれる。
しっかりフルボディの赤ワインを好む嗜好だが、繊細な味のカルパッチョには合わないか…、などと思っていると自然に出てきるシュっとした切れ味が爽やかな白ワイン。
ソムリエの山崎さん:
こちらはフランスに嫁いだ日本人女性が作った白ワインです。その名も「GYOTAKU」と言って、お魚料理に合うように作られています。
こういうことなんだ!
一人の晩餐は時間を持て余す。だからといって妥協できない夜もある。他愛もない会話も良いが、ワインやお料理のウンチクをツマミに飲めるのも素晴らしい。ソムリエの存在が一人の晩餐でも淋しくさせはしない。
ほう。…これはなんだ?
クリームチーズの香りが残る温かいココット。そこにトロトロな卵黄と…、!キノコの香りだな。キノコのピューレが卵とクリームチーズの衣装を纏い、口の中で大きな存在感を主張している。それに何より熱々のココット。心も身体も温まるじゃないか。
流れるような感動。そして静かに込み上げてくる歓喜。そんな演出を空間だけでなく、お料理でも見せてくれる。そして、この抜群のタイミングで出されるワインは赤に変わる。
…ということは。