【歴史探訪】-三塔物語に囲まれた、関東大震災の遺構を訪ねる―

遺構はこんなところにありました

横浜三塔は、横浜市の歴史的建造物である3つの塔、すなわちキング(神奈川県庁本館)クイーン(横浜税関)ジャック(開港記念会館)のことを指しています。

これら3つの塔を結んだ三角形の内側で何と、明治大正時代の横浜を偲ばせる歴史的遺構が2014年に見つかりました。いったいどのようなものなのでしょうか。

この遺構は、JR関内駅からみなと大通りを海の方へ歩いて10分、地下鉄みなとみらい線日本大通り駅から歩いてすぐのところ、本町通りの交差点を渡ったところにあります。

 
実際の遺構の写真はこれです。まさに、ビルの谷間にポツンと残ったようになっています。

アーチ型の枠を保った状態のレンガの壁が、見事に「皮一枚」で残ったようになっています。なぜ、このようなものだけ残ったのでしょうか。

元々その場所には、そば屋やレストランが入っていた建物がありました。2014年にその建物を解体しようとした際、壁の中からこの遺構が出てきたとのことです。

近くには説明文の書いてあるプレートがありました。文章を要約しますと…

  • この遺構は、明治に建てられた「開通合名会社」のものです。
  • 開通合名会社は、横浜港から陸揚げされた荷物の通関・発送手続き事務を行っていました。
  • 元々の建物は、レンガと石を組み合わせた外壁を持ち、屋根は瓦ぶきで「うだつ」という防火壁を備えていました。
  • 1923年9月1日の関東大震災で、建物の大半は倒壊してしまいましたが、現存する遺構の部分が残りました。
  • 通常なら、新しい建物を建てるために廃墟を完全に取り除くのですが、現存する遺構を覆うように、新しい建物が建てられていました。
  • 幸いにも、遺構を覆った建物は、太平洋戦争における横浜大空襲で破壊されることもなく、現代まで残っていたそうです。
  • ところが、2014年にこの建物が解体されることになり、その際に建物の内部に隠れていた遺構が、再び世の中に現れることになりました。
  • 幸いなことに、この土地の所有者の意向により、これらの遺構は
    ・横浜関内地域の日本人商社建築の記録
    ・関東大震災の記憶を現在に伝える貴重な歴史的遺産

 ― 以上プレート表記引用

として、そのまま現地に保存されることになりました。

Googleのストリートビューで、2009年撮影のものを見ることが出来ました。

 
たしかに、そば屋やレストランのような店舗が映っています。レストランはライブ・バーだったようです。筆者自身はそこを無意識で通過ばかりしてましたので、当時の様子はほとんど知りません。

当時の様子をご存知の方がいらっしゃるかどうか、SNSを通じて友人限定で問い合わせてみました。

すると、このような情報が集まってきました。

  • 遺構のあるところには、つい最近まで飲食店がありました。
  • 1階がソウル・バー
  • 2階がアメリカンな雰囲気のライブ・バー
  • 建物の1階のわきに、こじんまりとした立ち食いそば屋がありました。
  • 2014年の初め頃の冬の夜、雪の降る夜に火災が発生しました。
  • 建て替えるしか営業を復活させることが出来ない状況だったそうです。

Googleストリートビューを使うと、火災して間もないころの映像もみつかりました。痛ましい映像でした。

このお店ですが、解体するという話になる前は、復活を願う「応援メッセージ」が掲げられていることもあったそうです。しかしながら残念なことに、この場所での店舗復活はかなわず、建物の解体工事が行われることになりました。

そして、現在のような遺構が見つかることになったようです。

遺構の写真を見てみると、遺構には鉄筋コンクリートによる補強が施され、簡単には倒壊しないようになっています。

この遺構は象の鼻パークからは、横浜税関(クイーンの塔)を右目に通り過ぎ、左に神奈川県庁の本館(キングの塔)を見過ごして、右前方に開港記念館(ジャックの塔)が見えたころに、そばを通ります。

大きい割には地味な印象の遺構なので見落としそうですが、明治の横浜の名残りを垣間見、関東大震災のすさまじさを想像することができます。

ただ、この遺構が見つかるにあたり、ここにあった店舗が火災に見舞われてしまうという不幸があったことを、心に留めておきたいと思います。

おわりに

明治大正時代の、歴史的価値のある震災遺構が見つかったことはいいことですが、火災の遺構を解体して見つかった経緯を知り、複雑な気持ちになりました。私たちも、常日頃の火の用心は怠らないようにしましょう。
関内・関外ともに、昔からの名残のある遺構や建物があると思います。これからも随時調べて、ご紹介させていただきます。


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この記事の著者

佐野 文彦

佐野 文彦博士

滋賀県で生まれ、学生時代を福井で過ごす。社会人になってからは、横浜を生活拠点としている。本業の傍ら、ジャズやゴスペル・ファンクなどでサックス演奏や、コーラスグループでの合唱活動も行っている。横浜が自分の歌や演奏で満ち溢れるといいなどと、大風呂敷な夢を持ち歩いている。彷徨うような街歩きが大好き。

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