しかし何という洗練された空間だ。心の中で自らを落ち着かせるようにつぶやいた瞬間、マスターが飲み物は何にするかと、そっと声をかけてくれる。
まずは、ビールで。
乾いた喉は仕事で疲れていたからか、それともこの最高なまでにグッとくる店の雰囲気に圧倒されたからかすらわからないギリギリのところで、まずはその渇きを潤すビールをオーダーすると、
ソッとうなずいたマスターが旨そうにビールを注ぎ始める。
どうだろうか…
奥行がある木目のカウンター。そこにビールが注がれたグラスが、汗をかくようにヒンヤリと冷えて喉を潤してくれんと意気込む。
そしてカウンターの中にはには、この店がまずBARだとは分かる数々のお酒のボトルたちが、控えめな存在感をもって鎮座している。
後は…
店名の冠言葉にある「KITCHEN(キッチン)」というキーワードを探すだけ。
あっ…と、
メニューをあれやこれやと見て悩むより、初めてきたお店だからマスターのお任せに任せてみるか。
マスター:
メニューもちゃんと置いてあるのですが、その日にある材料で作れるものなら何でも平気ですよ。
普段からある物だと、ピザとか…。後はお肉ですね。
お肉はうちのオーナーがこだわっているというか、肉好きというか、基本的には毎日食べられるようになっています。
ほ、ほぅ
それが店名のもう一つのキーワード「キッチン」というやつの答えだな。そのある材料で…、お肉は基本毎日…。ということか。
今宵はあの時の夜のように、仕事に疲れて身も心も腹もクタクタだ。この気分の時は、しっかりと旨い物を腹にしまい込みながら、ゆっくりとお酒に浸っていたい。
いつもあるピザと、そしてお肉もいただくとするか。
サクッとパリパリサクサクな生地。熱々の状態で出してくれる計らい最高のピザ。ビールで潤ったはずの喉が、今度はチーズとのハーモニーを促すように、またビールへと手を伸ばさせる。
伸ばす手の先のビールの横には、お肉と一緒にちゃんと野菜を!の精神でオーダーしておいたサラダ。イタリアンパセリを先頭に、ホワイトアスパラ、トマト、ツナ、ベビーリーフにキュウリまで、豊富な種類の野菜をシンプルに塩コショウとレモンで頂かせてくれる。
ぷっはぁ~
なかなか良いじゃないか。喉を潤すビールに好物のピザ。野菜不足が著しくイライラが激しくなる業務の疲れを癒すサラダのビタミン。そしてそこに幸せの絶頂を超越させてくれるもう一口のビール。
さ…い…こぅ…じゃないかぁ。。。