2016年7月4日(月)

【別格】筆の誤りも知らない弘法に最高の喜びを教わる別亭空海!

アバター画像 森本 康司

関内の弁天通で遭遇した弘法は、筆を誤ることすらない別格の存在。別亭空海は和のテイストから始まる外観から序章を描き、まるで別世界を感じさせてくれるお座敷の個室も持つ。一層に精進を重ねた凄腕の究極の料理コースに、浮世の世界を実感する。

今年の流れは、何かが変だった。いつもの年なら、後半にかけ尻上がりに調子が良くなるというのに。

気が付けば夜の関内を出歩くことから、すっかり遠ざかってしまっていた。真冬の夜空に光る一番星の様なソフトクリームを食べた店から、良い意味で運気が変わったとも言える。

例年、ゆっくりとしたペースで進むことが多い上半期。

しかし今年は、妄想が止まらなかった店新スタイルで驚かされた店に辛うじて足を運べた程度で、夜出歩くことを控えさせられるように多忙な毎日。

折り返しに来て、ようやく一息つけた感覚だった。

その好調な上半期に大きく力を貸してくれたある人物。日頃は表舞台に出ることは少ないが、イベント行事制作物の発展を陰で支えるこの方を、接待するにはちょうど良いタイミング。

日本料理 別亭 空海の店づくり

別亭空海の外観

その接待の舞台としてチョイスするのは、弁天通にある趣のある佇まいが印象的な別亭空海。この街で過ごしていれば、当然その存在は知ってはいたが、心にゆとりを持って飲み歩くことが少ない身には機会がなかった。

別亭空海の和のテイスト

心にゆとり…

その認識をより濃くしてくれる和のテイスト。煌びやかな灯りが多いこの弁天通では、このさり気無い和のテイストは、更に際立つ。

別亭空海の暖簾

好調で多忙な日々を乗り越え、心にゆとりを持って迎える折り返しの今、この暖簾をくぐれることが何よりのご褒美だと感じてくる。

 
さて、

別亭空海のカウンター

外観の和のテイストからの流れが続くカウンター。洗練され尽くしたこだわりが、始まる前から最高のおもてなしを約束してくれているよう。

別亭空海のカウンター②別亭空海のこあがり
接待と言っても気心知れた相手。肩を並べてカウンターで語るも良いし、その奥にあるこあがりで、掘りごたつに足を投げ出し寛いでやるのも良い。どちらにしたって、この美しさに不満があるわけじゃない。

 

~ 接待ということは、予約時に伝えてあった。 ~

 
ん!?

更に奥に進んで、上へあがれだと…

別亭空海の階段①別亭空海の階段②
なんと…

洗面所だとばかり思っていた暖簾の先に、更に2階へと上がる階段がある。表の佇まいと、設えの美しいカウンターから始まる完成された店内に、2階にも席があるとは考えても見なかった。

もしかすると、流れるような美しさの1階は単に序章に過ぎないのかも知れない。

別亭 空海の2階

階段を上りきるとそこには、思った通り完璧な終章が始まる。

別亭空海の個室

カウンター、そしてこあがり席。

カウンターが一人晩酌やカップルに贅沢な親密さを演出した後、グループや仲間内に程よい解放感を与えるこあがりもある。それだけでも完結しているだろうと思えるのに、凛としてやや張り詰めるような空気感の個室まで用意されている。

6人では広すぎるだろうと思えるメインともいえる個室。更にこの個室を、関内とは思えない別世界にまで演出する坪庭。そして床の間には、存在感のある箪笥に生け花。

別亭空海の坪庭別亭空海の個室の床の間
この店の物語は、隅々まで緻密に練られて構成され、雑踏の中にあるはずなのに浮世の世界へと誘ってくれている。

メインの個室から振り返るとある、二つの間。それが、今宵の接待の舞台となるお部屋。

別亭空海の個室②別亭空海のテーブルセット
二つ間を仕切っている襖を外すこともできる機能性を持ちつつ、分けては今宵のような少人数の接待などの大切な折に、プライベートな空間を約束してくれる。

本論のお料理

1階の序章、そして2階の終章。

その完璧すぎる二つに装飾される本論は、もちろんのことお料理。

別亭空海のメニュー

大切な接待に欠かせない気配り。それは、メニュー選びに会話を邪魔されないことだ。今宵は感謝を伝え労をねぎらう大切な夜。

そしてそれを演出してくれる、このお店の真骨頂を感じるため、最高のコースを選ぶ。

別亭空海の前菜

接待の舞台は整ったと感じた瞬間。その時を同じくして始まる別亭空海の本論、そう料理。

現れたのは「うざく」や「もろこし豆腐」をあしらう3種の前菜。序章であった和のテイストの店内の流れを、途切れさせることのない見た目の器や盛り付け。

質の良い温泉宿に泊まり、部屋食を楽しんでいるかの様に錯覚させられてしまうが、ここは関内弁天通。そんな嬉しい錯覚もまた、日頃の疲れを癒してくれる。

別亭空海の前菜②別亭空海のうざく
何事も最初が肝心。この店の設えの良さに驚き交わされた会話だけでは、こちらはまだ和み切っているというわけではない。

そんな時に出される前菜に前に、お疲れ様の乾杯ビール。更に美しい器を話題に上らせ、盛り付けの美に感動の笑みを浮かべる。

この素敵な計らいは、通常なら始まったばかりでギクシャクする接待を和ませてくれる。

別亭空海のお造り

会話が和み始めたのを確認すると、次は鮮やかに盛り付けられたお造りが出てくる。本マグロにヒラメに鯖…

それはまるで、細かな氷の海に泳ぐ鮮魚。

別亭空海のお造り②別亭空海の③
息をするのも忘れてしまうぐらいに駆け抜けた上半期の様に、その豪華さに固唾をのんでしまうお造り。

最高の折り返しに、最高のコース料理。

ビールグラスに伸ばす手数が、つい増やされてしまう。今宵は最高の夜になりそうだ…

絶妙のタイミング

別亭空海の鮎の塩焼き別亭空海の鮎の塩焼き②

1階に厨房があり、2階には3部屋の個室。料理が持ち込まれる時を除き、閉められた襖。それなのにも関わらず、こちらの手運びを完璧に把握してるようなコースの流れ。

そのことに気が付かされたのは、この鮎の塩焼きが出された瞬間。

ほんの少しだけ空いている襖の隙間。盛り上がる会話の向こうで聞こえる、スタッフさんのやり取り。2階にある3室の個室のために、常にスタッフさんが襖の向こうに待機し、流れが途切れるのを防ぐ配慮がなされていた。

別亭空海で空いたビールグラス

しまった…

この店の素晴らしい絶妙のタイミングに感動するあまり、すっかり相手のペースに合わせた飲み具合を忘れていたようだ。

別亭空海でビール

絶妙のタイミングに出てくるお料理。それに、絶妙の塩加減でふっくらと焼き上げられた鮎。
この店の絶妙加減に驚かされて、こちらは接待の絶妙加減を忘れてしまっていた。ただそこは気を取り直して、新しいビールグラスで再度タイミングを合わせる挑戦をする。

まぁ、飲みたいだけだが…

別亭空海のとまと釜別亭空海のとまと釜②

一方では、絶妙のタイミングで続くコース。

緩急をつけた投球配分が試合の行方を導く野球の様に、塩味の利いた鮎のつぎに出される冷たく優しい出汁が香るとまと釜に盛られた鶏のひき肉。

サラダのようでありながらも、メインディッシュの様に手が込んだ仕事がなされている。

こちらのコースもいよいよ折り返し。その前に、丁寧な仕事を見せつけてくる上、前半と後半の舌の区切りをつけてくれているようなお味。

和む舌に、この接待は一足先に佳境を迎え始める。

本論のクライマックス

いよいよ料理のコースも後半戦か…

良い感じに接待の会話にも華が咲いた。あとはゆっくりと料理を味わい、そしてゆっくりとご褒美の喜びを噛み締めるだけ。

別亭空海のステーキと伊勢海老

そのタイミングで運ばれたお料理は、何と和牛ステーキと伊勢海老が同時に楽しめる皿。ここまでくると接待の域を遥かに超え、関内弁天通に盆と正月がいっぺんにきたような気分になる。

別亭空海の和牛ステーキ別亭空海の伊勢海老

しつこく無い程よい脂と柔らかくジューシーな肉。そしてプリプリとした弾力のある歯ごたえに磯の風味が香る伊勢海老。

この組み合わせを誰が想像し、誰が創造できるのか。



それが空海…

別亭空海で日本酒別亭空海で日本酒②

迎え撃つこちらも、負けてはいられない。豪華絢爛な和牛ステーキと伊勢海老のマリアージュで緩んだで舌を日本酒で引き締め、迎え撃とうぞこのクライマックスを。

別亭空海の鮑の天ぷら

な、なんと

絢爛豪華な組み合わせの次は、こちらも豪華さを極める鮑の天ぷら。贅沢は一度だけでも嬉しいというのに、攻めの勢いを落とすことは無い。

弾力の中に優しい柔らかさを感じる鮑の天ぷら。二度も遭遇した贅沢に、緊張の糸は緩むばかり。

別亭空海の天然岩ガキ別亭空海の天然岩ガキ②
二度あることは三度ある…

贅沢すぎるご褒美には、奇跡も起こってしまうのか。力を抜くことのない空海は、奇跡を三度も起こしてくれる。

大きな身の天然岩かきまで出てきてしまえば、こちらはただ降参するばかり。

今までに味わってきたカキは何だったのかと思ってしまうほど、濃厚な味をした岩かきに幸せは絶頂する。

 
さすがは、空海!

落ち着きを取り戻して結末へ

別亭空海のおろし蕎麦別亭空海のおろし蕎麦②
何度も訪れた驚きのクライマックス。そんな感動と喜びを、大切に胃に封じ込めるように出てくるおろし蕎麦。

舌で感じ取った多くの喜びを、今度は胃袋で満足として感じられるように、胃にそっと蓋をする役割を持った一品。

別亭空海のプリン別亭空海のプリン
筆の誤りを知らない空海

そんな想いが駆け巡った瞬間、全ての物語は結末を迎えていた。

絢爛豪華なクライマックスで大切な接待の席を盛り上げてくれたコース料理。外観の和のテイストから続くカウンターからこあがりの序章に始まり、洗練された和の極みを持つ個室の終章。

全ての調和を象徴する抹茶プリンは、どことなく儚く、どことなく控えめな甘さ。人の夢は控えめが一番甘いのだと教えてくれているようだった。

別亭空海の看板

今年の折り返しを迎え、上半期の喜びを分かち合う大切な接待の席。その宴席に選んだこの店は、大切なその想いを確実に受け止め、全てをもっておもてなししてくれる。

この街の弁天通には、別格の大師がいた。

それが、別亭 空海

筆すらも誤らない弘法に、完璧に満足させられた夜。弁天通に迷うことなく、まっすぐ帰ろうぞ。

ショップデータ

日本料理 別亭 空海
  • 横浜市中区弁天通3-48
    弁三ビル1F
  • TEL:045-664-5440
  • 営業時間:
    (昼)月-金/11:30-14:00(L.O.13:30)
    (夜)月-土/17:00-23:00(L.O.22:30)
  • 定休日:日曜・祝日

この記事の著者

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森本 康司編集長

関西に生まれ、学生時代をアメリカで過ごす。帰国から5年した頃に流れ着いたこの街が好きになり、2013年12月に関内新聞を立ち上げる。美味しいものに目が無く、あらゆる種類のお酒を飲むがバーボンが特に好き。近頃は、見様見真似でシェーカーを振ったり、料理をしたりすることが多くなった。お酒の空瓶で作るBottle Ware Artにハマっている。

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