愛する人へ気持ちを伝える証に贈られるダイヤモンド。その眩いまでの輝きの裏にある隠された真実にまで目を向け、本当の意味で「愛の証」となるダイヤモンドを追い続ける株式会社ピースダイヤモンド。贈られた人の幸せだけではなく、ダイヤモンドに関わるすべての人のハッピーを考えたジュエリーカンパニーの情熱を見る。
そんな株式会社ピースダイヤモンドの熱い想いと、込められた大きな愛を知るべく、同社 代表取締役の村上 千恵 氏にお話を伺った。
エシカル(=倫理的)なダイヤモンド
-ピースダイヤモンドで扱っているダイヤは他と何が違うのか?
ピースダイヤモンドでは、エシカルと認定されているダイヤモンドを使ったジュエリーを提供しています。エシカルとは、『倫理的な』という意味で、採掘から研磨、そして加工に至る全てのプロセスにおいて、非倫理的な要素を含まないと認定されるダイヤモンドをエシカルなダイヤモンドと呼びます。
-非倫理的な要素とは?
まばゆく輝くダイヤモンドには、別の一面があります。それは、児童労働や強制労働、または過酷な労働環境といった労働問題。更には紛争ダイヤと言われる、戦争などの資金源に使われてしまうダイヤモンド。そして、生態系や環境の破壊をもたらすような無謀な採掘方法まで、実は一般の人がダイヤモンドを手にするまでに、いろいろな非倫理的と呼ばれる要素が含まれています。
自分自身が婚約したとき
-ダイヤモンドのビジネスを始めたきっかけは?
私が婚約したとき、その婚約指輪を神戸にある友人のジュエリーの会社に作ってもらいました。その会社のデザインや、職人が一つ一つ作ってくれるということにとても感動し、また大変気に入りました。
しかし残念なことに、その友人が別のことを始めたいと、会社を休業することになってしまいました。自分がそこのジュエリーを気に入っていたこともあり、また皇室にも献上したことがあるぐらい技術がしっかりしていたところだったため、休業してしまうぐらいなら、自分がやりたいと考えるようになったのがきっかけです。
-引き継いで始めたということなのか?
その話は条件面などが折り合わず、その話はまだ実現には至っていません。ただそれをきっかけにダイヤモンドに興味を持つようになり、色々と調べ始めました。そうしたところ、裏に児童労働であるとか、強制労働であるとか、あと紛争ダイヤといったダイヤを資金源として武器を買い、内戦を助長させてしまうような問題があることを知ったのです。
知ってしまった以上、それを自分が販売するときに、あたかも知らない振りをして売るということが難しいし、また精神的にも辛いことだと思い、できることはないかと考え始めました。
-それで何を見つけたのか?
ダイヤモンドの多くはアフリカで採掘されていますが、実際に現場で掘っている人たちは経済的に自立ができていなく、貧困などに苦しんでいるのです。そしてその裏には、先ほどのような問題 ―児童労働や強制労働といった― があります。
もともと国際協力の仕事をしていたこともあって、何かそういった問題の解決ができないかと、フェアトレードという手法が使えるのではないかと、ビジネスのコンセプトにして始めようと考えるようになりました。
2年間の準備期間を経て
-コンセプトが見つかり直ぐに始めたのか?
会社を立ち上げたのは、去年…、2013年4月のなのですが、準備期間が2年ぐらいありました。その間は、ビジネスプランコンテストに出たり、それをきっかけに事業計画書を作ったりだとかしていました。その時に、昔同じ会社に勤めていた友人が手伝ってくれることになり、今は一緒にやっています。
-ビジネスプランコンテストで入賞して資金援助が?
ビジネスプランコンテストに入賞したからといって、開業資金援助のようなものはありません。最初に出たのは、ドリームプランプレゼンテーション。それで入賞したのが、横浜ビジネスグランプリというものでしたが、どちらも特に資金援助のようなものがあるわけではありませんでした。
-そうすると自己資金での開業ということか?
そうですね。自分自身と一緒に立ち上げた友人、あとは金融機関から調達しています。
-先行する企業やブランドが多いなか、なぜそれほどまでにダイヤモンドなのか?
ある程度、利益が出ると見込んでこのビジネスを始めたところもありますが、利益が上がるからこの商売をしようと考えたというよりは、本当に今のこの現状が許せないという気持ちが強かった。このままではいけないのではないか、と思っている方が強いですね。
今は日本でビジネスを始めていますが、日本で最初にジュエリーを身に着ける方は、ダイヤモンドの裏にあるそういった問題を知らずに選択しているので、そうじゃ無い ―エシカルやフェアトレードといった― 選択肢があっても良いのではないかと感じています。
ですから、先行しているジュエリーの会社やブランドがたくさんあることは分かっていますが、そういったところのダイヤモンドとは全く違った物と、自分では認識しています。
見た目には分からないダイヤモンドだからこそ
-とは言っても、一般の人には同じダイヤモンドに感じてしまうのでは?
確かにそうですね。“ただの普通のダイヤモンド”というかたちにしてしまうと、一般の方が“購入”するというところまでは繋がらないと思うので、実際に ―ダイヤモンドを取り巻く― 世の中で、どういったことが起こっているのかという点と、それに対してピースダイヤモンドが、どういった取り組みを行っているのかを伝えていくということが非常に重要であると思っています。
-伝わり方について、どう感じているか?
取り組みを始める前は、国際協力ということに意識の高い人たちだけが、当初は賛同してくれるのだろうと思っていましたが、意外にそうではなく、一般の方でも、そういった問題があるのであれば“自分も何かをしたい”と言って共感してくれる人が、想像していた以上に多かったという気がしています。
-一般の方がダイヤモンドに触れるタイミングは?
やはり取っ掛かりは、ブライダルの時だと思いますね。
これからご結婚される方が、自分が愛する相手に贈るダイヤモンドが、もしかしたら誰かを傷つけているかも知れない物より、しっかりと“そうではない”と証明されている物の方が、贈る側にとっても贈られる側にとっても、新しい門出を祝福するのに相応しい物だと感じていると思っています。
現状を知ってもらう啓蒙活動
-具体的な啓蒙活動の内容とは?
―起業してから― 去年一年間は、商品の開発に注力していましたが、今年からは商品の販売の他に、ダイヤモンドを取り巻く現状を知ってもらう啓蒙活動に力を入れていこうと考えています。
その最初の活動として7月5日~6日の二日間に、石川町のアトリエで初めてとなる展示会を開催しました。
これまでにピースダイヤモンドにお問い合わせをいただいたお客様やその友人知人の他、ホームページやFacebookでご案内をして、たくさんの方にご来場いただきました。
撮影のために訪れた展示会の会場には、商品が中心に展示されている煌びやかな展示会を想像して行ったが、商品の展示の他に、実際のアフリカのダイヤモンド採掘現場の写真がたくさん展示されていた。そこには、小さな子供たちが泥まみれになりながら採掘する姿や、過酷な環境で作業する姿が映っていた。