さぁて、今宵はどうするか?
寒い季節の良いところは、飲みたい気分になるタイミングとほとんど変わらない頃に陽が陰ってくるということ。無論、他にも色々と良いところあるだろうが、飲むことに対する罪悪感を軽減させるためか、飲兵衛は何かと飲むことに理由を付けたくなる。
時刻を伝えるメロディが聞えたから17時を過ぎた頃。
キングの塔として親しまれる県庁の近くにいると必ず聞こえるこメロディが、飲兵衛に活動時刻の始まりを告げる。
よし!
今宵も一人で繰り出すか…
そんなやり取りがココロの中で繰り広げられ、気が付くと関内の入口と呼ぶたこ焼き屋の交差点に近づいていた。
関内大通りと常盤町通りが交差する場所。それぞれの車道の信号とは別に、関内大通りを渡る歩行者信号と常盤町通りを渡るソレが一斉に青になる。関内駅に向かい伊勢崎辺りで飲むのも良いが、今宵は馬車道側に渡り関内の内側から攻めていく。
BAR Day Cocktail
常盤町3丁目の交差点から、常盤町通りを馬車道に向かい少し入ったビルの4階。飲食店が犇めくように入居するビルの中で、異次元の世界を感じさせてくれる店がこのBAR Day Cocktail(バー デイ カクテル)。
この店は、光に浮かび上がるABSOLUTのボトルがお出迎えする。それが、まだ暗くなり始めたばかりに飲み始める罪悪感を、入った瞬間から一瞬にして消し去ってくれるからたまらなく良い。
そして、所狭しとボトルが存在感を主張するバックバー。何から始めたいかと、気分と相談しながら眺めるだけでも退屈しない。
といっても、壁に掛けられた数々のカクテルコンペでの受賞歴を見ると、気分に相談すると恰好を付けてもメッキは直ぐに剥がされるが。
赤を基調とした洒落た店内。無数にあるボトル達と、この異次元な空間でどう戯れ、何をしてジャレ合い過ごしていくか。
ふぅ…
何から始めてやるとしよう。
相変わらず妄想が長いですね!
ドキっ
そ、その声は…、
この店のバーテンダーの佐藤健太郎さん(左)と、原田龍一さん(右)ではないか。あんまり驚かさんでくださいな。一人で飲むことが増えてたこの頃、この妄想タイムこそが愉しみの一つになりかけているというのに。
そういえば、Barでメニューをじっくりと見たことがない。どんな酒を飲むのか、何を飲みたいのかは、いつも自分のココロの中にある。
とは、言ってもだ。
まだ飲み始めの一杯目。気分を盛り上げるために、最初の一杯はビールをボトルでワイルドに始める。
ツイストトップのボトルで、陽が長いアムステルダムの夜に飲んだハイネケン。あれから何年時が経っても、まだ明るさが残る時間に飲むビールは、ハイネケンが一番だとココロが決まっていた。
原田さん:
あれあれ?またまた妄想タイムですか?
こちら、本日のお通しです。外は寒いですから、温野菜をご準備しました。
ま、またヤられてしまったか。酒とは思い出、思い出があるから酒が飲める…と、オランダのハイネケンを飲みながら、何年も前にアムステルダムで過ごした夜を想い浮かべて、確かに妄想に耽っている。
あれは今宵とは違い、暑くなり始めた季節。一年で一番陽が長い頃の夜だったが、今宵は雪でも降らんばかりの寒さ。客を思うちょっとした気配りがお通しにも込められているところは、さすがバーテンダーといったところ。
お通しの温野菜とハイネケン。これが終わる前に考えておきたい、次の一手。何を飲むのか、そしてそれに合わせるBarメシはどれか。Barといえば酒を飲むところ、Barといえば酒しか出さないところ、…という概念が大いに間違った先入観だと教えてくれた関内の街。
しっかり一軒目の店として、夜の散策を始めても良い場所なんだと、関内のBarで旨いBarメシに出会うたびに感じている。
だからこそ、
今宵の一軒目も迷わずこの店に来られた。
さぁて、何を食べようぞ…。
何を食べようぞって、いつの時代のお殿様ですか?