それはまるで、野菜畑で肉と人が戯れはしゃぐパーティのような幻想的な空間。
夢か幻か、それとも現実なのか。
柔らかな時間の流れに身を委ね、色鮮やかな世界で自然と共に生きている人間は、幸せすぎる生き物であることを再認識させてくれようとしていた。
お店の場所と雰囲気
集まるメンバーが迷わないようにと、目印になるビジネスホテルがある関内大通りの交差点からほど近い場所に店を決める。
関内にしては珍しい比較的道幅が広い入船通りにあるその店の存在は、関内に来た3年前から知っていた。
今宵の祝賀パーティの会場は、創作ダイニング パーソンズ。暗がりに優しく灯りを灯す照明に引き寄せられ、店の扉を開ける。
通り沿いの外観からは想像しにくい、実に奥行きのある店内は、野菜畑に映えるウッドデッキのような設え。
一人飲みやデートに使いたくなるような洒落たカウンター席は、口数少なくワインを楽しむのにちょうど良く思える。そして、視界の先に見える壁際の石が敷き詰められた柱が、山小屋にある暖炉で暖を取るようなぬくもりを感じさせてくれる。
更にその先に広がるテーブル席はゆったりとした空間に、濃い目の茶色が栄養分の高い野菜を育てる良質な土壌のような信頼性。
完璧すぎるほど完璧な店づくりは、テーブルに並べられたお料理を引き立たせる計算しつくされたコンセプトなのか…。
乾杯からパーティの始まり
モグモグ隊:
うわ~。いつも活字では読んでましたが、実際に目の当たりにするとかなり長いですね。素敵なお店だと表現するためとは言え、その妄想的な空想ってホントに必要なんですかね?素敵なら素敵!って素直に言えば良いような気もしますがね。
例えばこの自家製ジンジャーエール。ピリッとした生姜と甘すぎない甘味がとっても美味しい!
ね!わかりやすく伝えられるじゃないですか!
確かにねっ!
と言いたいところだが、この空想シーンには色々な思いが濃厚に凝縮され詰め込まれているんだ。だが4度目の桜シーズンを迎えるにあたり、多少の変化も必要かも知れないか…。
それにしてもこの創作ダイニング パーソンズのお料理は、見た目の華やかさ以上にそのボリューム感にも驚かされるな。祝賀パーティにあの大食漢なメンバーも来たとしても、必ずや満足してくれるに違いない量だ。
さてワイン好きのメンバーは到着したようだし、テーブルに並んだ目に華やかなお料理の数々を頂くとしよう。
お料理を実食(前半)
まずは5種も鮮やかに飾られたオードブルの盛り合わせ。どの品々もワインと絶妙な相性で、味わう舌を楽しませてくれる。
この日のオードブルはスモークされたサーモンを頂上に、レバームース、自家製のパテ、和牛のたたきに、白身魚のカルパッチョが、丸い木皿のステージで楽しそうに踊っているよう。
ワインとのマリアージュだけでなく、目でも美味しさを楽しませてくれる美しさに最初から興奮は絶頂に達してしまった。
モグモグ隊:
あの~。これって、もう食べちゃっても大丈夫なんですよね?
活字だけで美味しさを表現するのは大変かも知れませんが、これだけ美しい見た目なんですから、そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないですかね?
こうやって、パクっ!
うん、美味しい!って、ストレートな表現でいいんじゃないですか?
確かにな…
オードブルに続いて現れた、この野菜のオーブン焼きも美しすぎる容姿。グリル皿にところ狭しと身を寄せ合い、大地から授かった赤や緑に紫の色鮮やかさが、どんなに活字で形容したとしても太刀打ちできないと教えてくれる。
それはまるで宝石箱!
モグモグ隊:
あっ!使っちゃった!だから何度も言ってますが、クドクドと活字を並べて分かりにくい表現をしなくても良いんじゃないですか?
それに久しぶりに使っちゃいましたね。〇〇箱やぁ~ってヤツ。確か創刊直後の初グルメ記事で登場した以来、封印していたはずなのに。
モグモグ隊:
まぁご存知だと思いますが、その〇〇箱やぁ~って、人様の物ですよ。そんな人様の力を借りなくても、このお店のお料理なら、まっすぐな表現で伝わると思んですがねぇ。
シンプルにオーブンで火を入れたお野菜のグリルは、アスパラガスから濃厚な味を引き出しながらしっかりとした食感を残し、プチトマトの酸味を甘味に変えてしまう絶妙な温度で、ニンジンの甘さをさらに引き立てている。
ねっ!お料理にまっすぐに向き合い、お野菜の良さをストレートに表現してあげれば、この美しすぎるお野菜の彩りで、十分に美味しさが伝わると思いません?
その通りかもな…
次々に出てくるパーティメニュー。その一つ一つが見た目に美しい。この豚肉のグリルも、その盛り付けにアートすら感じてしまう。
ジャガイモ、ニンジン、カリフラワー、そしてブロッコリー。それらがこの料理の主役である豚肩ロースを、美しくデコレートする。
それはまるで豚肉が数々のジュエリーを身にまとい、オシャレをして出かけるパーティ会場。
その様子を口の中で感じさせてくれる、このお肉の柔らかさ。オリーブ豚だからできるのだろうか?脂もあっさりしてしてモタれることもなさそうだ。
少し酸味が効いたマスタードのソースをつければ豚肉の脂の甘味が際立ち、バルサミコのソースをつければ2つの甘味がハーモニーを奏で、柔らかさがホッとするオリーブ豚肩ロースがいろいろな装いの味へと変化する。
モグモグ隊:
やればできるじゃないですか!まぁ、まだ若干表現の長さが分かり易く伝わるか心配ですがね。
次はせいろ蒸しですよ!見てください!この湯気から伝わる温もり!
お料理を目で愉しませる、もう一つの大事なポイント。鮮やかな色採りの次は、温かさが間違いなく伝わるこの湯気ですね!
モグモグ隊:
しっかりと蒸された豚肉は、余分な脂が程よく抜けて、肉本来の甘味が感じられます!そして、その脂を下に敷き詰められたお野菜がまとって、甘味がさらに増した柔らかキャベツが絶品!
モグモグ隊:
いやぁ~、これはビールが進んじゃうこと間違いなしですね!
お料理を実食(後半)
いよいよパーティも後半戦へ突入。
普段なら〆の品々には手を出さないが、あれだけ食べたにもかかわらず、まだまだ胃袋に余裕がある不思議な夜。街の喧騒を離れ緑広がる高原を歩いてたどり着く、山小屋のような雰囲気が胃袋に与える余裕なのか。
石の器でグツグツと音を立て、半熟卵をセンターに生クリームとチーズを従えたリゾットのステージ。祝賀パーティをさらに盛り上げてくれる一品といったところか。
さっきまで表現が長いと、苦言ばかりを言ってくれていたこの子も無口になり、モグモグとひたすらに食し始めた。
モグモグ隊:
いやぁ~、美味しいです!とシンプルに表現したいところですが、このお料理にシンプルは失礼ですね。
リゾットがカルボナーラ風なうえに、石焼きと来てます!リゾット単体でお料理として成り立つのに、それをパスタのカルボナーラ風にアレンジして、その上石の器で焼き上げる。石焼きならではの嬉しいおこげもちゃんとできてて、シンプルに表現すると失礼にあたる何重奏にも渡るコンビネーション。
きゃ~、味のファンタジスタ!
ふふっ!そ~ら見たことか。
妄想にふける活字の表現に苦言を呈していたこの子も、ついには人様の言葉を借りて、活字で美味さを伝える魅力の術中にはまったようだ。
さて、もう既に幸せに満腹感を感じている胃袋に、二人目の〆の選手が登場したか。
カルボナーラがリゾット(米)で出てきた次は、ボロネーゼが王道とも言えるパスタ(麺)で現れる。米に麺といえば、〆の先頭をひたすら走る代表格。
先ほどあの子が味のファンタジスタと表現したリゾットとは違い、こちらは見た目に安定感を感じるパスタ。
ただその安心感を優しく覆してくれてしまうのが、ゴロゴロという表現が最もふさわしいと思えるソースに絡んだ肉の大きさ。
ふぅ~
たくさん食べてお腹いっぱいと、〆に手を出さずに終わらせなくてよかった。このお肉がゴロゴロのボロネーゼは、食べないと損するほどに後悔していたところだな。
久しぶりに見つけられちまった…
宴もたけなわ、パーティも終焉…
モグモグ隊:
ちょっと、ちょっと。勝手にパーティを終わらせないでくださいね。女子には必要不可欠な、スイーツがまだ残ってますからね!
えっ!?
あれだけ食べておきながら、まだ入るというのか?
モグモグ隊:
まぁ月並な表現でしょうが、別腹ってやつですね。
モグモグ隊:
色鮮やかなお野菜とお肉のお料理の数々も嬉しかったですけど、このチーズケーキも侮れませんね。サワークリームとクリームチーズの、2層仕立てのチーズケーキになってますよ。爽やかなサワークリームと、濃厚なクリームチーズが絶妙な相性で一つにまとまってますっ!
それに、このガトーキャラメル。カスタードのプールにプカっと浮かび、しっとりとした生地にヒトヒトにカスタードをまとって、甘くて優しいお味。
食後のスイーツは、やっぱり別腹。食べなきゃ終わらないって感じですね!
久しぶりのキメ台詞。既に一度出してしまったが、本当は、こっちの台詞が正しいのか。
関内に来てから3年が過ぎた。最初のころに気になった、あの感覚は間違いではなかったんだ。数多く回った気になっていたが、また気持ちを新たに次のステップへ進むとしよう。
それにして、今宵の祝賀パーティの会場とした創作ダイニング パーソンズは、目にも鮮やかにお料理を楽しませてくれ、客の満腹感を貪欲なまでに追求してくれる嬉しいはからいだったな。
次は誰を連れパーティをしてみようか…。
ショップデータ
- 創作ダイニング パーソンズ
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- 横浜市中区住吉町3-37
村山ビル1F - TEL:045-663-4039
- 営業時間:17:00~24:00(L.O. 23:00)
- 定休日:日曜・祝日
- 横浜市中区住吉町3-37