そんなことを心の中で呟いたが、既に目はどの席に座るか選び始めていた。
ついさっき、店の様子を伺っていた時に見たガラス扉の内側のテーブル席が良いか。
ここなら目線の高い位置から店内の雰囲気を楽しむことができると同時に、関内の街を行き交う人の流れを楽しむこともできる。
関内という街をどんな人が歩き、どんな酔いどれが関内の夜を遊ぶのかを、つまみに飲んでみるのも良いかも知れない。
いや、待てよ。
ハイチェアに座り、カウンターに肘をつきながらバーボンをちびりとやる方が良いか。
どうせアテも用もないんだ。
カウンターに腰かけ、この店のどことなく温かく、そして何やら妙な刺激を感じる雰囲気にバーボンを合わせるのが良いかも知れない。
ほら、見てみろ。
このカウンター、奥行きがあって落ち着くじゃないか。
それに年季が入ったカウンターの木は、この店の歴史を感じさせるように、角も表面も柔らかく人の手で優しく磨かれている。
壁に飾られたアンティークっぽい絵も良いな。