タップリと働き、セッセと作業を片付け、気が付けば21時にも近い時間。確かに普段なら、2軒目にハシゴしても間違いではない時間とも言えようが、腹に何かを入れたい気分であることから、時間には関係なくしっかりとしたメシが食べたい胃袋だ。
それなのに、その胃袋がこの場所に当たりを付け、久しぶりに脳がサインを出す前に扉を開けたという。
魅惑的な色に神秘を感じたからなのか…。
荘加さん:
何からお飲みになりますか?
寒い中を今夜は、比較的長く歩いて来た。まっすぐこの場所に向かえば、これほどまでに身体を冷やすことはなかっただろうが、今夜は目で見つけた店にも興味を示さない胃袋がいた。ぶらぶらとアテもなく彷徨ってしまった夜だったから、足元から髪の先まで冷たく感じる程になっている。
胃袋にカイロを貼るか…。
そう心に決めると、これ以上に身体を冷やさないように、冷たい取りあえずのビールはパスして、胃袋の中から暖める飲み物を選ぶ。
そう…、
スコッチをストレートで…だ。
ふぅ~。
口の中にウイスキーの香がいっぱいに広がった途端、今度は喉から食道にかけて熱くなり、その熱がやや落ち着いた頃に胃袋がポカポカになる。
寒い国の男たちが、キツイ酒をストレートで一気にやる気持ちは、今ここにこうして現れてくる。これこそが胃袋にカイロをやった良い気分。
さぁて…。
ツマミは何にしようか…。
・
・
Barには長い髪の女性が良く似合う…。そんな歌のようなフレーズが頭によぎり、カウンターの向こうで楽しそうに会話している女性客の手元にくぎ付けになる。
ナイ♪エン♪フォーク♪
なんとな!?
Barにてナイフとフォークで、お肉を食べているとな…。
良く見ると、こちらの男性客も何やら美味そうな、分厚い肉を切り分けようとしているではないか…。
ココはBarだったはずだ…。いや、その存在感だけで、この店がBarだと判る重厚感たっぷりの扉を確かに開けた。この手で間違いなく開けたのだから、ここがBarであるということは間違いが無い。
なのにも…だ。
ツマミは何をで送った先の視線に勘違いしましたね?このお店にもあったんですよ、例の物が…。