マスター:
ターコイズですね。
分かりました。
なんだ、このカウンターの男は?
この店のマスターと、しっかりと呼吸があっているようだな。古い付き合いのように見える。その男が言うんだから、きっと美味い…、
いや違うな。
この店に、何度か来ているこれまでの安心感と安定感。心が落ち着き、また新たな活力をくれる、深夜12時過ぎの憩いの場。
その店のマスターが作るカクテルだ。きっと美味いに決まっているか。
マスター:
ヒプノティックというフルーツリキュールとジンに、ミントとライムでシェイクします。
甘味のあるカクテルですが、ミントとライムですっきりしていますので、ピザとの相性も良いですよ。
この方のおっしゃる通りです。
ほぉ。
ヒプノティックのカクテル自体、初めて飲むような気がするが、それをいきなりピザと合わせるというのも…。なかなかいいもんじゃないか。
確かにこのカウンターの男が言うように、すっきりしていて合う。
モルト・ウィスキーで渋く…、などと恰好つけてばかりいたが、こういったカクテルを片手に、Barでピザを頬張る男もまた渋く映るんではないだろうか。
せっかく良いことを教えてくれたんだ。一人では少し持て余すかも知れないピザをお礼に食べてもらうか。
それにしても、この店の空気感は好き過ぎてたまらない。
ただ黙ってもくもくとモルト・ウィスキーをやるのも良いと思っていたが、こうしてピザとカクテル、それとカウンターに偶然居合わせた男と会話するのも、また良き瞑想となり心身に安らぎをくれる。
どんな時にこの店に足を運ぶかは、その時の気分に合わせて…、と答えるのが一番良いようだ。
静かに流れる静寂に、ゆっくりと物思いに耽り、慌ただしく流れる日頃の時間の速さを、正しい速度に直していく。
そう、ゆっくりと時間をリセットするように…。