美味しい物が食べたい…。
そのメッセージの送り主は、すっかりレギュラーとして定着しつつある登場の仕方をするようになった、アイツのお友達とやらのあの子。
どうやら前回の登場で味を占めたようで、偶然なのか必然なのか、はたまたどこかでこちらの行動を見ていたかのように、山下公園にいるというあの子に、この店までの道順をメッセージで返し、その到着を待った。
今年のクリスマスのメニューは決まったの?
先ほどからクリスマスの予約の応対をしてくれている、顔見知りとなった店の人と話しながら、あの子が来るならカウンターで食事でも摂ろうと、目の前で繰り広げる洋食のシェフの手際が良い調理工程を見て楽しむ。
この時間が至福だな。
こうしてカウンターに座り、料理をするシェフの仕草を一つ一つ目に焼き付くように、ゆっくりと時間を過ごすのがたまらない。
自分のオーダーでは無いとはいえ、こうして目の前で調理され、プレートに乗せられる次の瞬間までの工程を見ているだけで、うっとりとお腹の中が温かくなっていくようにも感じる。
そして徐々に、その調理されている物の形がわかりはじめ、それが洋食の帝王とも呼べるあのオムライスちゃんだと判る頃、今度は胃袋の虫が温かみだけではなく、それを口に頬張れと命令し始める。
まだ来ないのか?
山下公園からホテルを目印に水町通りに入るだけなのに、これほど時間がかかるはずがない。
迷ってでもいるのだろうか…?と、心配になり始めた時、眺めの良いテラス席の方から賑やかな声が聞こえることに気が付く。
カンパイ
モグモグ隊:
あれ~。
お店に着いたの気が付いてなかったんですか?
カウンターで毎度のようにシェフの姿に見惚れていらっしゃるので、一応声はかけたんですがね。
お友達も連れて来ちゃったから、長い妄想時間にお付き合いすることができませんでした。