関内の名所をめぐって220円で旅気分
パン、アイスクリーム、ビール、ケチャップ、郵便、鉄道、テニス、ラグビーなどなど「日本で初めて」という物事が横浜には数々ありますが、この夏に加わった新しい「日本初」が、国産初の連節バス「ベイサイドブルー」です。
ふたつの車体をつないだ全長18mのブルーボディ、このバスが走っていると、見慣れたはずの関内の景色が新鮮に目に映りますね。
横浜駅~山下ふ頭の間で運行されているベイサイドブルー。
上りと下りで少しルートが変わりますが、ハンマーヘッド、赤レンガ倉庫、大さん橋、山下公園そして中華街と関内エリアの主な名所に停車しながら、片道約35分で走ります。
運賃は220円(小児110円)。普通の横浜市営バスと同じです。
横浜駅から山下ふ頭へ移動するだけなら、みなとみらい線のほうが早いですよね。でも、ヨコハマベイサイドブルーは35分かけて走る、ゆったりのんびり感がいいんです。
大きな車体に乗り込んで車窓から景色を眺めていると、きっと誰でも「もう終点に着いてしまう」と下車するのが惜しくなってくるはずですよ。
ベイサイドブルーは、座席37、立席75、乗務員も含めて計113人が乗車できます。
車体側面には「ふたつの車体」と「ふたつの連なる波」をイメージしたダイナミックなシンボルマーク。
後部には、後ろを走るクルマに注意をうながす表記も。真後ろから見たら、この長さに気がつきませんからね。
ふたつの車体をつなげている連節部分、ここが全長18mの真ん中です。
車内からみると、連節部分はこのようになっています。走行中はここに立ち止まらないでくださいね。
ベイサイドブルーの車両は、日野ブルーリボンハイブリッド連節バス。横浜市交通局は、この車両を4台導入。
日本初の車両なので、フレームには1番から4番の車体番号が打刻されていて、それに合わせて登録番号も1番から4番。このナンバープレートで走っています。
清潔な車内、そして左折とUターン!
ここはベイサイドブルーの終点、山下ふ頭のバス停留所です。ここでベイサイドブルーの乗務員さんに話をうかがうことになりました。
この待合室の乗車券販売機では、お得な一日乗車券や「みなとぶらりチケット」も購入できます。
さあ、大きな車体が山下ふ頭に入ってきましたよ。
空の青さを濃縮したようなマットメタリックブルー。バス停の2倍の超える長さですね。
横浜市交通局のバス乗務員は全員で1100人ほど。そのなかでベイサイドブルーに乗務することができるのは、選抜されたわずか22人。選りすぐりのエリートドライバーです。
交通局に紹介していただいた乗務員の山崎さんにうかがいました。ベイサイドブルーの乗務員に志願した動機は?
「大きなバスで横浜の街を走ってみたかったんです。それで、募集が始まった時に、せっかくのチャンスだし乗務したいなと思いました。横浜市全体の大きなプロジェクトなので、やりがいがありますからね。乗務するメンバーみんな気合が入っていて、朝早く営業所に来てバスを掃除するんです。手で雑巾がけするんですよ、外側も車中も。窓枠や床や隅から隅まで、雑巾がけしてきれいにしています。乗務前に十分な時間をかけて毎日掃除しているんですよ」
きれいなのは新しいバスだからと思ってましたが、忙しい乗務前にまさか毎日掃除しているとは、すごい意気込みですね。車内に並ぶシックなグレーの座席は、女性にも評判がいいそうです。
山崎さんにもうひとつ質問を。運転席から見える市民の反応は?
「通りを歩いていてこのバスに気がつくと、お~っという感じで見送る人は土日に多いですね。それから、乗車していた人が停留所で下車すると、スマホを手に駆け足でバスの前に行って写真を撮ったり。自分が乗ったバスの写真を撮る人が結構いますよ」
「バス乗務員として新しいことにチャレンジしたいので志願しました」と語る平さんには、運行ルート上の難所、乗務員としての腕の見せ所をうかがいました。
「山下ふ頭入口の信号。あの左折は攻め所です。初めは確実に曲がれるように大きくハンドルを切っていましたけど、乗務を繰り返してきた今はバスがきれいに走るよう心がけて運転しています。いちばん後ろのタイヤが車線に沿うように曲がると、連節部分の折れ曲がりが小さく、揺れることなくきれいに曲がれるんです」
これが山下公園通りのはずれにある山下ふ頭入口の信号。下りバスはここを左折して山下ふ頭に入ります。
そして、山崎さんと平さんのふたりがあげるもうひとつのポイントは、海岸通四丁目の信号。下りの山下ふ頭行きがサークルウォークから万国橋を渡り、海岸通りへと左折する信号です。進入する海岸通りの幅が狭くなるので、確かにこの左折は難しそうですね。連節部分が曲がっているようすも分かります。
なにしろ普通のバスの2倍、電車と同じほどの長さですから、街中の交差点での運転は相当な技術と気配りを要するはずですね。ちなみに連節バスの運転に必要な特別の免許はなく、普通のバスと同じ大型二種免許になります。
横浜市交通局ではベイサイドブルー乗務に際して60時間の訓練を必須としていますが、選抜された乗務員さんはそれを超える100時間以上の訓練を積んで運転の腕をみがき、乗務に臨んでいるそうです。
また、パシフィコ横浜とパシフィコ横浜ノースのUターンも見どころ。連節部分が大きく曲がり、後部車両の窓からバスの先頭が見えるほどベイサイドブルーが急な曲線を描きます。上り下りともこの停留所に入ります。
ベイサイドブルーの停留所は、ひと目でベイサイドブルーのバス停と分かるトータルデザインを採用。液晶モニターでバスの運行状況が分かる接近表示機が設置されています。
平日、土曜休日ともほぼ30分に1本の割合で運行。
ちょっと気分転換したい時に、いつもは電車で移動する区間をベイサイドブルーに乗ってみる。そんな利用の仕方もいいかもしれません。もちろん観光にもおすすめです。
ベイサイドブルーに乗ると、オープン前のガンダムファクトリーの一番近くに行けるんです。上りの横浜駅行きバスは、山下ふ頭を出発した直後にガンダムの前で一時停車してくれますよ。
ところでベイサイドブルーと巨大ガンダムの全長、同じ18mだって気づいてました?