そう感じるのが普通の感覚だろう。いくら女性が男性に比べ非力としても、そこまで苦労するのは誰が見てもおかしい。
その疑問を感じさせることこそが、この横濱帆布鞄の最大の特長だ。
というのも、この鞄に使われている素材は普通、このような鞄を作るためには使われるものではない。
船のカバーなどに使われる素材
そう教えてくれたこの人こそが、徹底的なこだわりで横浜をブランドにするおしゃれなバッグを作る、横濱帆布鞄の代表の 鈴木 幸生 氏だ。
この素材は、海上自衛隊などの船で使われる素材。当然濡れても平気だし、船のカバーにも使われる素材だから丈夫なのだ。
鈴木氏はさらに続けた。
長年もの作りに携わってきた経験の中で、いい製品はどうしても模倣品が出回る。その事実は当然のことで、どうしても避けることができなかった。
だから、自分で会社を興した後、自分にしかできない、自分にしか作れないブランドを作りたかった。
横浜に長年住み続けて来たから、横浜をブランドにしようと思った時に、この素材に目をつけたのだという。
横浜といえば港町。目の前の海には当然多くの船が行き交う。この素材にこだわるのは、物作りへの強い信念と、横浜をこよなく愛しているからだろうということを感じさせてくれる。
普通はこんな手間のかかる素材を製品にしようとは思わない。作りやすさこそが、大量に生産する大前提だから。
しかしそう教えてくれる鈴木氏自身は、それを使おうとしたのだと…。
意気込みですね。
そうあっさりと言い放った鈴木氏。
なぜ普通は鞄には使われない作りにくい素材を、横濱帆布鞄では、これほどまでにおしゃれなバッグたちに仕上げることができたのか?の問いかけに答えてくれた時、カメラを持つ手に一気に鳥肌が立った。
横浜にこだわったから045
横濱帆布鞄のバッグに使われるブランドには、この番号が刻印される。言わずと知れた横浜の市外局番。
鈴木氏の頑なまでのこだわりは、細部にまで光っている。
そう…、素材選びから、ブランド名にまで。
一つ一つが手作業
ミシンで縫う作業工程だけではなく、ショルダーにかけるベルトの先に使う革のパーツも、全て手作業で丁寧に作業を行うと、更に鈴木氏は教えてくれる。
このパーツでも、単純に革を貼り合わせるだけではなく、貼り合わせた後も裁断面に磨きをかけ、手触りよく仕上げている。
確認するようにその部分を触ってみると、確かに手触り感が素晴らしく、ファインダーの先には無い、この鞄を使っている自らの姿に、シャッターが切られたような感覚に陥った。