久しぶりの宴席だな。
誰かと一緒に飲むってのは苦手なんだが、鶏の旨い店があると誘われてしまっては断るわけにはいかない。
仕事の話をしながら飲む酒っていうのはあまり好きじゃない。
そのことを知っているから、無類の鶏好きを呼び出すために店を厳選したのだろう。
にくいことをするじゃないか。
仕事帰りのビジネスマンたちが駅へと向かう流れと逆行し、関内大通りを歩いていく。
確か呼び出しでは、関内大通りから弁天通りに曲がってすぐにあると言っていた。
建物の地下にあるお店だから静かに飲めるとも言っていたが、果たしてどんな店なんだろう。
そう思って歩いていると、案内されたとおり、弁天通りに入ってすぐにその店を見つけた。
地鶏旬菜 時穏
ほう。なかなか雰囲気のある店構えをしている。
落ち着いた雰囲気で仕事の話をしたいということか。
珍しい名前だな。
時に穏やかと書いて「じおん」と読ませるのか。
夜の闇に輝く星か。
名前といい、入口においてあるオブジェといい、なかなか良い雰囲気を醸し出している。
仕事の話も重要だが、今の興味はこの雰囲気の良い店で食べる鶏料理だ。
それでは入ろう
店の扉を開けた瞬間に飛び込んで来たのは、カウンター席と無数の焼酎のボトル。
ゴクリっ…。
酒好きにはたまらない。
最近は焼酎を好む女性も多くなったと聞くが、この雰囲気だと女性と一緒にきても良いかも知れない。このお洒落なカウンターで肩を並べ、鶏料理と焼酎でゆっくりと語る。
そんな大人な雰囲気も良さそうだな。