市川オーナー:
どこまで話しましたかね…。
あ、そうそう。こんな素敵なお店を持てたらって、二十歳過ぎの頃に思ったってところでしたね。
それから何十年も経ったある日、このお店がなくなってしまうって話を耳にしたんです。
最初のノルウェー人のオーナーが亡くなった後、その奥さんが、このお店を守ってこられていたんですが、その奥様もお亡くなりになって、お店が閉まってしまったのです。
それで、こんな素敵なお店が取り壊されて、また別のお店に貸し出す…。そんな話を聞いたときに、いてもたってもいられなくなって。何とか、自分にこの店をやらせて欲しいと、関係者の方に想いを伝えました。
若い時の夢が正夢だったということか…。
二十歳過ぎにこの店に来たとき、いつかこんな素敵なお店を持ちたいと考えた気持ちが、色んな縁を引き寄せた。それを叶えるだけの強い想いがあったということだな…。
ふぅぅ…。
何て素敵な話なんだ。良い店を残したい、良い想い出を繋いでいきたいと、このオーナーが強く思ったからこそ、今こうして美味い酒と一緒に、時空を旅している感覚になっていられている。
古林さん:
お代わりですね。かしこまりました。
煌びやかな話を聞くと、もう一つ飲みたくなってしまう。ここの酒は良い酒だ。アイツに負けずと、ヨイヨイと洒落こんでみるか。
さっきいつものバーボンを探した視線の先で、気になっていたもう一つのバーボン。そいつがコレだった。
このオーナーのように、二十歳を少し過ぎたばかりの頃、初めてバーボンを飲む仕草を教えてくれた大切な想い出があるから、今になってもいつものバーボンを選んでいるが、今は違った想い出を作りたくなった。
な、なんと!
ま、まだ飲むつもりなのか?
…、いや、まだ飲めるっていうのか??
パクパク隊:
オーナーの素敵なお話を伺っていたら、私もついつい飲みたくなってきちゃったわよ。
このお店の素敵な雰囲気は、色んな人の大切な想い出が詰まっているのね。
良いお話を聞いていてら、熱くなってきちゃったから、冷たいカクテルをお願いしちゃった!
何ともまぁ、可愛らしいお飲物なんでしょう。
確かに、素晴らしい話を聞いていると、色んなところが熱くなってくる。
それに見た目にも夏らしいカクテルだな。