夏休みが到来し、関内には今年もたくさんの観光客が訪れているようです。関内を代表する観光地である中華街も、いつも以上に活気づくシーズンとなりました!
今回はそんな中華街のシンボルともいえる10基の門「牌楼」にスポットを当て、小紙きっての“カメラ小僧”大谷デスクによる写真と共にご紹介してまいります。
東西南北にある4基
まずは中華街の外周にあたる4基。関内ツウのかたには言わずとしれた、東の「朝陽門」、南の「朱雀門」、西の「延平門」、北の「玄武門」です。
この4基は、横浜中華街発展会協同組合の理事長(当時。2012年に退任)であった萬珍楼社長の林兼正さんが、中国文化を発信するツールとしして、中国人の暮らしに根付いている「風水」を活用できないかと考えて生まれたものなのだそうです。林兼正さんの著書「横浜中華街 街づくりはたたかいだ」(発行:神奈川新聞社)の一節にこうあります。
華人の建築士の知恵も借りて思いついたのが、中華街の東南西北に、風水思想でそれぞれの方角を表す色と神獣を配した門を設けて街を守るとともに、中国の伝統文化を紹介し、観光資源として活用することでした。
風水思想のベースとなっている五行説では、それぞれの方角を表す色と聖獣が決められています。東は「青」、「青龍」。南は「朱(赤)」、「朱雀」。西は「白」、「白虎」、北は「玄(黒)」、玄武です。東南西北を守る4基の門を改めて見てみると、その豪華絢爛な姿にはこれらがモチーフとしてしっかりととり入れられています。
東:朝陽門
東の「朝陽門」は、10基の中で最も大きな門です。
中華街の門ってどれもカラフルなので、実をあまり気にしたことがなかったのですが…確かにしっかり「青」の門ですね。
そして「朝陽門」の文字の下には東を守る聖獣である「青龍」がずらり。日の出を迎える門ではありますが、夜の姿も厳かで猛々しい雰囲気を醸し出しています。
南:朱雀門
こちらは南の「朱雀門」。夜の空に朱色が映えてうっとり…!「朱雀門」の文字の下や、その両側に、あでやかに羽を広げた朱雀の姿が見られます。
その表情はまさに「守り神」。厄災をはらい、大いなる福を招いてくれます。
西:延平門
西の「延平門」は、白の柱に白虎の姿。
柱のてっぺんや見上げた部分に、勇ましい白虎の彫刻があしらわれているのがわかります。平和と平安のやすらぎが末永く続くことを願う門です。
北:玄武門
北の「玄武門」ですが…あれ?黒くない…?と、思いきや柱の部分がしっかり黒。
夜になると、鮮やかな色彩と重厚な柱の黒のコントラストがさらに美しいです…!
玄武は他の聖獣と比べ聞き慣れない感じもしますが、蛇のように長い首をもつ亀のこと。子孫の繁栄をもたらす門なのだそうです。
さて、五行説の色と聖獣をモチーフにしたこれらの4基ですが、南の「朱雀門」と北の「玄武門」は聖獣の名前がそのままついた門なのに、東の「朝陽門」と西の「延平門」はそうではないということ、お気づきでしたか?
そのワケも、前述の、林兼正さんの著書「横浜中華街 街づくりはたたかいだ」(発行:神奈川新聞社)の中にありました!
西門通りでは、白虎門という仮称を示したところ、台湾系の華僑に拒否されました。台湾の隠語で白虎は縁起が悪いし、日本人も白虎隊をイメージするのでふさわしくないという理由でした。
「白虎門」がお蔵入りになったことで東の門の仮称「青龍門」もあおりを受けて「朝陽門」に落ち着いた、という背景があったそうです。聖獣ではなく、それぞれの門が持つ意味をとり入れて名前にしたということなのでしょう。
その他の6基の門
これら4基以外にも、残り6基の門があります。
天長門
関帝廟通り東端の「天長門」
地久門
同じく関帝廟通り西端の「地久門」
市場通り門2基
市場通りの南北い位置する2基の「市場通り門」
西陽門
JR石川町駅のそばにある「西陽門」。西を守る聖、白虎の姿もありますね。
善隣門
そして、最後にご紹介するのは、中華街でいちばん最初にできた門、「善隣門」です。
現在の善隣門は二代目で、1989年の横浜開港130周年を記念した横浜博覧会にあわせて建て替えられました。
初代の善隣門は1955年に完成しています。終戦後に当時の平沼亮三市長や内山岩太郎県知事がサンフランシスコのチャイナタウンを視察し、横浜中華街も同様に観光地として発展させられるのではないかと考え、街のシンボルとしての門を建設するに至ったそうです。
まとめ
豪華絢爛、あでやかな姿でわたしたちを迎えてくれる中華街の10基の門。今日も、聖獣たちが街全体を守り、邪気を取り払ってくれているに違いありません。
普段何気なく通りすぎがちかもしれませんが、改めてその姿を見てみませんか。門に宿る聖獣の姿を、ぜひ探してみてください!