酒飲みの極意を知り尽くすと匂わす仕草
どうするね?
そんな声をかけられた気にさせてくれる、おやっさんの指先から「シュッシュ」と微かに聞こえる仕事の音。日に焼けた肌と、さりげなく向けてくる視線が、言葉にせずとも旨いもんを知り尽くすと導かせる。
岩松さん:
勤めをしていた時に、あっちこっちで旨いもんを食ったね。特に鹿児島とは深い縁があったのか、長いこと行き来していたよ。5年ばかしは常駐もしたし、その前後に行き来していた時代も含めると13年近くは縁があったね。
ん!?
この店かい?この店は今年の3月中旬にオープンしたんだ。これまでは、クチコミや紹介なんかでお客さんが遊びに来てくれててね。
あっ!
そういえば、アンタも先日うちのお客さんに連れてきてもらったんだったよね。そんな風にお客さんがお客さんを連れてきてくれるって感じでやってるよ。
そうそう…。
鹿児島との強い縁がね、この店につながってるんだ。酒は色んな種類を置いてるけど、薩摩焼酎の品揃えには自信を持っているよ。特選の焼酎をね、直接入手できるルートを持っているからね。
それに、
基本的に置いてある酒は、全て自分で飲んで“美味い”と思った酒ばかりだね。薩摩焼酎はもちろん、日本酒や洋酒に至るまで、自分の舌で味わった酒ばかりだね…。
岩松さん:
「どんこびっ」って、店の名前かい?
それはね、がまガエルのことだよ。鹿児島弁でがまガエルのことをどんこびっと言ってね、最後に小さい「っ」が入って成立する言葉だね。
ほら、後ろの飾り棚にもちゃんといるだろう?「どんこびっ」ってのが、うちの店の名前だよ。
なるほど…。
縁があった鹿児島で、その魅力に取り憑かれ、薩摩焼酎を基本にした酒の品揃えか。店の名前ががまガエルってのも、何とも面白い発想だな。そういえば、あのカエル。どことなく、このおやっさんに見えなくもないか…。ふふっ。
せっかくだから、静かに飲むのは、薩摩焼酎にお相手をしてもらおうか。
豊富に品揃えられる本格薩摩焼酎
さっきから、さりげなく飾り棚に鎮座しているプレミアム焼酎が飲めよ飲むなと気になってくれる。森伊蔵に魔王、それに村尾か。普段、日本酒を選ぶことが多いが、この御三家ぐらいは知っている。
あれは果たして、飲ませてくれるものなんだろうか?
岩松さん:
もちろん。飲んでもらって結構だよ。さっきも話したけど、うちはね、特別なルートを持っているから、御三家のプレミアム焼酎だって、ちゃんとお客様に飲んでいただけるようになってるよ。
もちろん、あれだってちゃんと中に入っている本物さ。
岩松さん:
芋焼酎はお好きなのかい?それだったら、他にももっと珍しい薩摩焼酎を置いているよ。コイツ等は、芋焼酎らしい芋焼酎だね。
い、いかん…。
「熟柿」に「侍士の門」、「萬膳庵」に「萬膳」ってのもあるのか。それに、「なかむら」に「黄色い春」、そして「亀五郎」か…。
まったく見たことも聞いたこともないぞぉ。