その当たり前にして、何をもの追随を許さない、本物としての誇り。
ふぅ…。
もちろん、正統派すぎる程に正統派といえる、このカクテルを作るバーテンダーの無駄の無い所作も美しいマジックだ。
さり気なく着こなすスーツも、その動きを妨げることが無いように、1mm単位まで計算されているかのように仕立てられている。カクテルを作る動きの美しさを、更に別次元の輝きにまで魅せているのは、全てが絵に描かれているかのように計算されたシンフォニー。
シェーカーを構えたその立ち振る舞いにすら、無駄なシワや張りもなく、そこにあるべき物がないという正しい矛盾が、他の者を寄せ付けない間違いの無い地位を確立している。
なんだ、やっと来たのか。
パクパク隊:
相変わらず妄想が長かったわね。久しぶりだったけど、いつものことだと思ったので、お勧めのカクテル「オスロ」を頼んじゃったわよ。
あぁ、構わんさ。
今はもう、そんな突然の登場でも驚いたり、のけ反ったり、笑いを取りに行って照れ隠しをしようという気分じゃないのさ。この店の長い歴史と、綺麗に整った全てのものとの絶妙な調和を、肌と香で楽しんでいたい気持ちだ。