随分と冬の気配が近く感じるようになってきた。
凛と張った冷たい空気の心地良さは、ただでさえ美しい夜の景色をより一層と美しく感じさせてくれている。
11月になり“今年も残り2ヶ月か”と、過ぎゆく時間の速さを惜しみながら、久しぶりの休日に山下公園の散歩に出ていた。
山下公園をゆっくりと歩いていると、その歩幅に合わせるようにゆっくりと辺りが暗くなり始める。
見つめる先に見えるベイブリッジが柔らかくライトアップされ始め、振り返るとみなとみらいの高層ビルがキャンパスに散りばめられた宝石のように輝き始める。
冬の気配と“この”美しい夜の景色が、どうしたって聖なる夜を待ち遠しく感じさせる。大切な相手と素敵な夜の食事を演出しなくては…と、この時期になると考え始めるクセが付いたのも、横浜に住むようになってからの事だった。
みなとみらいの夜景を見ながらロマンチックに時間を過ごすカップルを横目に、冷たい空気の心地良さと夜景のお陰で、クリスマスのディナーの事を思い出してしまうと、ちょうど良いなと足があの店に向かい始める。
洋食のtaku.
山下公園から大きなホテルを中華街の方に向かい、直ぐに交差する水町通りにある洋食のお店。この界隈には、好きな洋食のお店が幾つかあるが、何年か前からこの店でクリスマスの夜を過ごすようになると、1番良い席を確保しておこうと、早めに予約を取るようになったお店だった。
天気の良い日に山下公園に散歩に出た時には、遅めのランチをゆっくりと摂らせてもらったり、週末なら陽の高いうちからの早めの夜ご飯で、洋食とワインを楽しむ時に使ったりしている。
少し早いが今年のクリスマスを予約して帰るか…。
前の年は少し予約が遅くなってしまって、座りたかった席が確保できなかった。たったそれだけのことと思っていたが、そのことをチクチクと言い続けるアイツに苦い思いをさせられた。
クリスマスの夜ぐらいはゆったりとした気分でテーブルに向かい合い、会話を楽しみたかったと、今年の夏ごろまでチクチクと言われていた。
そのチクチクについては右から左へと聞き流し、クリスマスのディナーだというのに、いつものようにカウンターに腰掛け、会話そっちのけでシェフの所作に見惚れていたことが、更にどツボを踏んだのもまた事実。
そうなれば、1番乗りで予約しておこう!と考えるものだ。
すっかり顔見知りとなった店の人と、前の年の苦い想い出を笑いながら話していると、お腹の虫が鳴ったのかと勘違いするほどの絶妙なタイミングで、スマートフォンにメールが着信する。